理科
「漬ける」お茶・阿波晩茶——乳酸菌がつくる後発酵茶の科学
関連ワード:発酵 微生物 乳酸菌 酵素 食品科学 C3H6O3
要点(監修AIの解説)
徳島の山あいに伝わる阿波晩茶は、茶葉を乳酸菌で発酵させる世界でも珍しい「後発酵茶」。発酵という身近な現象から微生物と食品科学を学べる。
解説
私たちが飲むお茶の多くは、摘んだ葉を加熱して発酵を止めた「不発酵茶(緑茶)」か、酵素で酸化させた「発酵茶(紅茶・ウーロン茶)」です。ところが徳島県の山間部でつくられる『阿波晩茶(あわばんちゃ)』は、これらとまったく違う『後発酵茶(こうはっこうちゃ)』という珍しい製法でつくられます。
後発酵茶の特徴は、酵素ではなく『微生物』の力を使うこと。ゆでた茶葉を桶に漬け込み、空気を遮断した状態(嫌気環境)で『乳酸菌(Lactiplantibacillus など)』が糖を分解して乳酸をつくります。ちょうど漬物やヨーグルトと同じ『乳酸発酵』で、これが阿波晩茶の爽やかな酸味とうま味の正体です。カフェインが非常に少ないのも特徴です。
近年の研究では、阿波晩茶に含まれる成分がアレルギーに関わる『疾患感受性遺伝子』の働きに影響する可能性も報告されており、伝統食品が最新の分子生物学の研究対象にもなっています。2021年には国の重要無形民俗文化財に登録されました。
『発酵』は理科(生物・化学)の重要テーマ。緑茶・紅茶・阿波晩茶の違いを『誰が(酵素か微生物か)』『どんな環境で(好気か嫌気か)』反応を起こすかで整理すると、発酵と酸化の違いがすっきり理解できます。