理科
ウイルスは14日間増え続けたのに、腸はほとんど傷ついていなかった
要点(監修AIの解説)
手足口病を起こすウイルスが、人の腸を再現した「腸チップ」の中で14日間増え続けたのに、細胞はほとんど壊れなかった。免疫の反応も弱いままだった。
解説
手足口病は、子どもの手や足、口の中に水ぶくれができる病気です。原因のひとつがエンテロウイルスA71(EV-A71)で、まれに脳や神経に重い症状を起こすことがあります。ただし、このウイルスが体の中で最初に増える場所である「腸」で何が起きているのかは、これまでよく分かっていませんでした。人の腸を長期間そのまま観察する方法がなかったからです。
東京科学大学の高山和雄教授らは、ヒトの多能性幹細胞から「腸チップ(腸MPS)」をつくりました。培養皿の中に、患者の腸に近い状態を再現した小さな装置です。ここにEV-A71を感染させ、14日間の変化を追いました。
結果は予想と違いました。ウイルスは14日間ずっと増え続けたにもかかわらず、腸の細胞はほとんど傷ついていなかったのです。さらに、感染した腸チップではインターフェロン(ウイルスに対抗するために細胞が出す物質)による免疫の反応が十分に起きていませんでした。
つまりEV-A71は、腸を壊して暴れるのではなく、免疫の見張りをすり抜けながら静かに増え続けている可能性があります。症状が出ていない間にウイルスが広がってしまう理由の手がかりになるかもしれません。
この成果は学術誌 Journal of Virology に2026年7月28日付で発表されました(DOI: 10.1128/jvi.00250-26)。