Science
火星で純粋な硫黄の結晶を初めて確認。探査車の車輪が割った石の中にあった。マグマの蒸気が地下で冷えて固まったとする論文がScience誌に
Related terms: 地学 化学 火星 硫黄 単体と化合物
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NASAの火星探査車キュリオシティが2024年5月30日にゲール・クレーターのゲディズ・バリス水路で車輪で割った石の中から、黄色い結晶が見つかった。X線分光装置APXSの分析で、硫酸塩や硫化物ではなく単体の硫黄(自然硫黄)と確認された。火星で単体の硫黄が確認されたのは初めて。ワシントン大学(セントルイス)のスコット・ヴァンボメル氏ら14人の論文はScience誌に2026年6月28日にオンライン掲載、8月20日号の表紙になった。硫黄の主な供給源はマグマの蒸気で、地下の凍った層で冷えて固まり、水路の侵食で圧力が下がって放出されたと提案している。
Explanation
NASAの火星探査車キュリオシティは2012年8月にゲール・クレーターに着陸し、2014年からクレーター中央の高さ約5kmのシャープ山(アイオリス山)を登っている。2024年5月30日、山腹のゲディズ・バリスという水路の跡を走行中に、車輪が明るい色の石を踏んで割った。割れ目から見えたのは黄色い結晶だった。
火星の岩石に硫黄が含まれること自体は珍しくない。ただし、これまで見つかっていたのは硫酸塩や硫化物のように硫黄が他の元素と結びついた鉱物で、硫黄が単独で存在する「自然硫黄(単体硫黄)」は火星では確認されていなかった。探査車のアーム先端にあるアルファ粒子X線分光装置(APXS)で調べたところ、石は表面の砂とほこりを除けばほぼ純粋な硫黄でできていた。周囲には同じような明るい石が広い範囲に散らばっていた。2024年6月18日には近くの岩「マンモス・レイクス」をドリルで掘り、41個目の掘削試料として内部の分析も行っている。
ワシントン大学(セントルイス)のスコット・ヴァンボメル氏を筆頭とする14人の論文「ゲール・クレーターの自然硫黄堆積物」は、Science誌に2026年6月28日にオンライン掲載され、8月20日号(393巻6813号、820〜825ページ)に載って、割れた硫黄の写真が表紙になった。
単体の硫黄は、地球では火山の噴気孔の周りなどの限られた条件でできる。論文は、火星でも主な供給源はマグマ由来の蒸気だったと提案している。硫黄を含む蒸気が地下の凍った層(クライオスフィア)で冷えて固まり、その後ゲディズ・バリスが侵食されて上の岩が削られ、圧力が下がったことで地表近くに出てきた、という筋書きだ。これが正しければ、古い火星の地下では、軽くて浮き上がる流体が硫黄を運んで濃縮する過程が働いていたことになる。
単体の硫黄は水があると酸化されて硫酸塩に変わりやすい。純粋なまま残っていること自体が、この場所のその後の環境を語る手がかりになる。キュリオシティは着陸から14年たった今も、この水路の周辺で観測を続けている。
Source: www.science.org