電気分解と工業的応用
電気分解は外部から電気エネルギーを与え、自発的には起こらない酸化還元反応を強制的に進める操作です。工業生産で大活躍します。
基本知識
電気分解の電極(電池とは逆向きに用語を使うので注意):
・陰極: 電源の負極につながり、還元が起こる(陽イオンが電子を受け取る)。
・陽極: 電源の正極につながり、酸化が起こる(陰イオンが電子を渡す、または電極自身が溶ける)。
代表例:
・水の電気分解(希H2SO4 など): 陰極で H2、陽極で O2 が体積比 2:1 で発生。
・食塩水の電気分解: 陰極で H2、陽極で Cl2、溶液中に NaOH が残る(イオン交換膜法)。
・銅の電解精錬: 粗銅板を陽極、純銅板を陰極にして CuSO4 中で電気分解 → 99.99% の純銅が得られる。
電気分解(外部電源で強制的に酸化還元を起こす操作)
陰極(電源の負極側。還元が起こる。陽イオンが集まる)
陽極(電源の正極側。酸化が起こる。陰イオンが集まる)
ファラデーの法則(生成量は流れた電気量(C)に比例する)
電気量(Q (C) = 電流 I (A) × 時間 t (s)。1 mol の電子 = 96500 C)
融解塩電気分解(Al, Na などイオン化傾向が大きい金属の精錬法)
深掘り (背景・意義)
電気分解の計算はファラデー定数 F = 96500 C/molがカギです。電子 1 mol が流れる電気量が 96500 C と覚えます。
例: 1.0 A の電流を 32 分 10 秒(=1930 秒) 流したときの電気量 Q = 1.0×1930 = 1930 C。流れた電子の物質量 = 1930/96500 = 0.020 mol。
工業応用:
・アルミニウムの製錬: 酸化アルミニウム Al2O3 を氷晶石とともに融解塩電解で還元。電力大量消費(電気の缶詰)。
・NaOH の製造(食塩電解): イオン交換膜法でクロロアルカリ工業の中心。
・銅の電解精錬: 不純物の Au, Ag は陽極泥に沈み、回収される。
これらは身近な金属・化学製品を支える基幹技術です。
- 陰極 = 還元、陽極 = 酸化
- 電池とは用語が違う(電池: 負極/正極、電気分解: 陰極/陽極)
- ファラデー定数 F = 96500 C/mol
- 電気量 Q = I × t (C = A × s)
- 電子の物質量 = Q ÷ 96500
- 水の電気分解: H2:O2 = 2:1 (体積比)
- アルミ製錬 = 融解塩電気分解(電気の缶詰)
注意点 (混同しやすい)
① 電池の正極と電気分解の陽極は逆の役割(電池の正極=還元、電気分解の陽極=酸化)。混同注意。② 陽極の反応は電極の材質で変わる。銅電極なら銅自身が溶ける、白金電極なら電解液の陰イオンが酸化される。③ Cu の電解精錬の陽極泥には Au, Ag が含まれる。④ 1 mol の電子 = 96500 C をしっかり覚える。
練習
- 電気分解で還元が起こるのはどちらの電極か。
- 1.0 A の電流を 16 分 5 秒 (965 秒) 流したときの電気量を求め、流れた電子の物質量を求めなさい。(F=96500 C/mol)
- アルミニウムの工業的製法は何法か。