生態系のバランスと自然浄化
生態系はある程度のかく乱を受けても回復する力をもちます。これを復元力(レジリエンス)といい、生態系の安定性を支えています。
基本知識
生態系は外部からの撹乱(自然のもの: 台風・山火事・洪水/人為的なもの: 伐採・狩猟・汚染)を受けても、撹乱が一定範囲内であれば元の状態に戻る性質をもちます。これを復元力(レジリエンス)と呼びます。
河川や海洋で代表的なのが自然浄化です。少量の有機物汚染であれば、微生物が分解し、河川流下とともに水質が回復します。下水処理場の活性汚泥法はこの自然浄化の原理を工業的に強化したものです。
ただし、撹乱が大きすぎると復元できず、生態系は別の状態に移行することがあります。
・湖沼への過剰な窒素・リン流入→富栄養化→アオコ・赤潮発生→魚介類の死滅。
・熱帯林の大規模伐採→森林再生せず草原化(レジームシフト)。
・サンゴ礁の白化→死亡→海藻優占への変化。
生態系のバランスは生物多様性によって支えられています。多様性が高いほど復元力が高くなる傾向があります。
かく乱(生態系の外部から加わる変動。台風・伐採・汚染等)
復元力(レジリエンス)(撹乱を受けても元に戻る力)
自然浄化(河川などで有機汚濁が微生物分解で浄化される現象)
富栄養化(窒素・リンが増えすぎて水質が悪化する現象)
アオコ(淡水で藍藻が大発生して水面が緑色になる現象)
赤潮(海水でプランクトンが大発生して水面が赤褐色になる現象)
生物多様性(種の多様性・遺伝的多様性・生態系の多様性の総体)
深掘り
河川の自然浄化を有機汚濁が流入する地点から下流へかけて測定すると、特徴的なパターンが見えます。汚濁直後は有機物とNH4+(アンモニウム)が高く溶存酸素(DO)が急減します(分解菌の呼吸で消費)。下流に進むと有機物は分解されてNO3-(硝酸)に変化、酸素も大気から供給されて回復します。藻類(植物プランクトン)の増殖で酸素が増え、魚類も戻ってきます。
富栄養化は窒素とリン(特にリンが律速)の過剰流入で起こります。生活排水・農業排水・家畜糞尿が主な原因です。湖沼の赤潮・アオコは魚介類の大量死を招き漁業に大打撃を与えます。霞ヶ浦・諏訪湖・琵琶湖などで深刻な問題となってきました。1996年制定の水質汚濁防止法や生活排水の高度処理で改善が進んでいます。
- 復元力(レジリエンス)=撹乱からの回復力
- 自然浄化=微生物による河川の有機物分解
- 下流で有機物↓・NH4+↓・NO3-↑・DO回復
- 富栄養化=窒素・リン過剰
- アオコ(淡水・藍藻)と赤潮(海水・プランクトン)
- 大規模かく乱は復元力を超えレジームシフト
- 多様性が高い生態系ほど安定性が高い
注意点
① アオコは淡水・藍藻、赤潮は海水・プランクトンと使い分け。② 富栄養化の原因は窒素とリン。特にリンが少量で効く。③ 自然浄化には限界があり、汚濁が大きすぎると追いつかない。④ レジームシフト=一度別状態に移ると戻りにくい不可逆変化。
練習
- 撹乱を受けた生態系が元の状態に戻る力を何というか。
- 湖沼で藍藻が大発生して水面が緑色になる現象を何というか。
- 富栄養化の主な原因となる2つの元素を答えなさい。