放射線と原子核
原子核の変化から放出される放射線の種類と性質、被曝の知識は現代市民に必要な素養です。
基本知識
放射線の種類と特性:
| 種類 | 正体 | 電荷 | 透過力 | 電離作用 |
|------|------|------|--------|----------|
| α 線 | ヘリウム原子核 ⁴He | +2 | 小(紙で止まる) | 大 |
| β 線 | 高速電子 | −1 | 中(薄いアルミで止まる) | 中 |
| γ 線 | 電磁波 | 0 | 大(鉛・厚い鉄筋で止まる) | 小 |
・X 線も電磁波(γ 線と本質的に同じ、発生機構が異なる)
半減期: 放射性元素の原子数が半分になるのにかかる時間。元素ごとに固有。
t 半減期後に残る量: N = N₀ × (1/2)ᵗ
放射線の単位:
・Bq(ベクレル): 1秒間に崩壊する原子数
・Gy(グレイ): 吸収線量(物質が吸収したエネルギー [J/kg])
・Sv(シーベルト): 等価線量(生体への影響を考慮)
α 線 (alpha ray)(ヘリウム核。電離作用大・透過力小)
β 線 (beta ray)(高速電子。中程度の透過力)
γ 線 (gamma ray)(高エネルギー電磁波。透過力最大・電離作用小)
半減期 (half-life)(放射性核種の原子数が半分になる時間)
シーベルト (Sv)(人体への放射線影響の大きさ。等価線量の単位)
核分裂・核融合(重い核が分裂/軽い核が融合してエネルギーを放出)
深掘り (背景・意義)
日本人の自然放射線被曝量は年間約 2.1 mSv(世界平均 2.4 mSv)。胸部 X 線 1 回 ≒ 0.06 mSv、CT スキャン 1 回 ≒ 2〜20 mSv です。100 mSv 以下では確定的な健康被害は確認されていません。
炭素の放射性同位体 ¹⁴C(半減期 5730 年)は生物が生きている間は体内に一定割合で存在しますが、死後は補充されなくなり減少します。残存率から年代を推定するのが放射性炭素年代測定です。
核融合発電は重水素・三重水素を融合させてヘリウムとし、大量のエネルギーを得る技術です。燃料が海水から得られる重水素などで実質的に無限、放射性廃棄物が核分裂より少ないため「夢のエネルギー」と呼ばれますが、プラズマを高温高密度で閉じ込める技術が難しく、ITER(国際熱核融合実験炉)で実用化研究が進んでいます。
- α 線: 透過力最小・電離作用最大
- γ 線: 透過力最大・電離作用最小
- 半減期: 元素ごとに固有の時間
- 半減期 n 回後: N₀ × (1/2)ⁿ
- Bq: 崩壊数/秒
- Sv: 人体への影響量
- 核融合: 水素→ヘリウム(太陽・将来の発電)
注意点 (混同しやすい)
① 透過力と電離作用は逆の傾向。透過力大 → 電離作用小。② γ 線とX 線はどちらも電磁波で本質は同じ。発生原因(核崩壊 vs 電子の制動)が違う。③ 放射線(エネルギーを持つ粒子・電磁波)と放射能(崩壊する能力、Bq で表す)と放射性物質(放射線を出す物質)を区別する。④ 半減期の式は指数関数。2 回では 1/4、3 回では 1/8 になる。
練習
- α 線・β 線・γ 線のうち、透過力が最も大きいものを答えなさい。
- 半減期 10 日の放射性元素が 30 日後に残る量は元の何分の何か。
- 放射線の人体への影響の大きさを表す単位を答えなさい。