CRISPR-Cas9 ゲノム編集の原理と応用
CRISPR-Cas9 は「遺伝子のハサミ」と称されるゲノム編集ツールで、2020年にジェニファー・ダウドナとエマニュエル・シャルパンティエにノーベル化学賞をもたらしました。医療・農業・基礎研究に革命をもたらしています。
基本知識
CRISPR(クリスパー)とは細菌の免疫記憶機構 "Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats" の略。細菌は侵入ウイルスの DNA 断片をゲノムに記録し、再侵入時にCas9タンパク質とガイドRNA(gRNA)を使って外来DNAを切断する。
ゲノム編集の原理:
① 目的配列に相補的な 20 塩基のガイドRNAを設計する。
② gRNA が Cas9 タンパク質を目的配列へ案内する。
③ Cas9 が DNA 二本鎖を切断(DSB: 二本鎖切断)。
④ NHEJ(非相同末端結合)で不正確に修復→遺伝子ノックアウト、またはHDR(相同組換え修復)で鋳型DNAを使い正確に置換/挿入(ノックイン)。
応用: がん細胞の遺伝子標的療法・遺伝病(鎌状赤血球症)の治療・農作物改良・モデル動物作製など。
例題: CRISPR-Cas9でA遺伝子をノックアウトしたい。(1) ガイドRNAに設計すべき配列の条件を述べなさい。(2) NHEJとHDRの違いを説明し、ノックアウトにはどちらが適しているか答えなさい。(3) ゲノム編集とトランスジェニック技術(従来の遺伝子組換え)の違いを説明しなさい。
解答: (1) ガイドRNAはA遺伝子のターゲット配列(20塩基)に相補的な配列をもち、その直下流に PAM配列(NGG)が必要。(2) NHEJは切断末端を直接結合する不正確な修復でフレームシフト変異が生じやすくノックアウトに適する。HDRは相同配列を鋳型にした正確な修復で特定配列のノックインに使う。(3) 従来の遺伝子組換えは外来遺伝子をランダムに挿入するが、ゲノム編集は内在ゲノムの特定箇所を精密に改変できる。
解答: (1) ガイドRNAはA遺伝子のターゲット配列(20塩基)に相補的な配列をもち、その直下流に PAM配列(NGG)が必要。(2) NHEJは切断末端を直接結合する不正確な修復でフレームシフト変異が生じやすくノックアウトに適する。HDRは相同配列を鋳型にした正確な修復で特定配列のノックインに使う。(3) 従来の遺伝子組換えは外来遺伝子をランダムに挿入するが、ゲノム編集は内在ゲノムの特定箇所を精密に改変できる。
ポイント
- CRISPR-Cas9=細菌の免疫記憶機構を転用したゲノム編集ツール
- ガイドRNA(20塩基)+Cas9が目的配列を認識し切断
- NHEJ→不正確修復→ノックアウト
- HDR→正確修復→ノックイン
- ダウドナ+シャルパンティエ=2020年ノーベル化学賞
- PAM配列(NGG)がCas9の切断に必須
練習
- CRISPR-Cas9でゲノムを編集する際に「ガイドRNA」が果たす役割を説明しなさい。
- DSB後の修復経路NHEJとHDRをそれぞれ特徴を踏まえて比較しなさい。
- CRISPR-Cas9を用いた遺伝病治療の倫理的課題を1つ挙げて論じなさい。