高校発展 / 動物の発生 3 / 6

形成体と誘導 シュペーマンの実験

形成体と誘導 シュペーマンの実験

発生の過程で、ある細胞群が隣接する細胞の分化の方向を決定することを誘導といいます。シュペーマンの古典的移植実験は発生生物学の礎となりました。

基本知識

誘導(embryonic induction): ある組織(誘導組織)から分泌されるシグナル分子が、隣接する組織(被誘導組織)の分化方向を決定する現象。

シュペーマンの形成体実験(1924年): イモリ(有尾両生類)の初期原腸胚における背側原口唇を別の胚に移植したところ、移植された胚に第二の体軸(二次神経管・二次脊索)が形成され、結合双生児様の胚ができた。背側原口唇は「形成体(オーガナイザー)」と命名された。シュペーマン(と弟子のマンゴルト)は1935年ノーベル生理学・医学賞を受賞(マンゴルトは受賞前に他界)。

神経誘導の分子メカニズム:
外胚葉はデフォルトで表皮に分化しようとするが、形成体から分泌されるノーダル・コーディン・ノギンなどのタンパク質がBMP(骨形成タンパク質)シグナルを阻害することで、外胚葉が神経板(神経管)へ分化するよう誘導される。

神経管形成(神経胚化): 外胚葉の神経板が折りたたまれて神経管になり、脳・脊髄の前身となる。神経管の形成不全が二分脊椎(先天性奇形)を引き起こす。

例題: シュペーマンの実験で、イモリAの背側原口唇をイモリBの腹側に移植した。(1) 移植後にイモリBに生じる変化を説明しなさい。(2) この実験が「誘導」の概念を確立した理由を述べなさい。(3) 形成体が分泌するシグナル分子の作用を1つ説明しなさい。

解答: (1) 移植された背側原口唇が二次形成体として機能し、移植部位の周囲外胚葉を神経板・神経管へ誘導し、二次脊索も形成される。結果として二つの体軸をもつ結合双生児様の胚が生じる。(2) 移植組織(形成体)が宿主細胞の運命を自律的でなく他の細胞からのシグナルで決定させることを示した。これは細胞分化が細胞自律的でなく近傍組織との相互作用で決まる証拠となった。(3) コーディンはBMPと結合してそのシグナルを阻害することで、外胚葉細胞が表皮でなく神経板へ分化するよう誘導する。
ポイント
  • 誘導=ある組織のシグナルが隣接組織の分化方向を決定
  • 形成体=背側原口唇。シュペーマンが命名(1924)
  • シュペーマン=1935年ノーベル生理学・医学賞
  • 形成体の誘導因子=コーディン・ノギンがBMPを阻害
  • 神経管=外胚葉の神経板が折り畳まれて形成
  • 二分脊椎=神経管形成不全による先天性奇形

練習

  1. シュペーマンの実験で背側原口唇が「形成体」と呼ばれる理由を説明しなさい。
  2. 神経誘導においてBMPシグナル阻害が神経分化を促進する仕組みを述べなさい。
  3. 神経管形成不全が引き起こす疾患を1つ挙げ、予防法(葉酸摂取)との関連を説明しなさい。
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このレッスンのQ&A

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