発酵と化学合成
酸素を使わずにATPを得る発酵(嫌気呼吸)と、無機物の酸化エネルギーで有機物を合成する化学合成は、多様なエネルギー獲得戦略の代表例です。
基本知識
発酵の概要: 酸素なしで解糖系のみでATPを産生する過程。解糖系で生じたNADHを再酸化し、NAD⁺を再生して解糖系を継続させることが目的。産生ATP=正味2分子/グルコース(好気呼吸の約1/15〜1/17)。
乳酸発酵: 乳酸菌・動物の嫌気的筋肉運動で行われる。
ピルビン酸 + NADH → 乳酸 + NAD⁺(乳酸デヒドロゲナーゼ触媒)。
アルコール発酵: 酵母菌が行う。ピルビン酸→アセトアルデヒド(ピルビン酸デカルボキシラーゼ・CO₂放出)→エタノール+NAD⁺(アルコールデヒドロゲナーゼ触媒)。パンや酒の製造に利用。
その他の発酵: 酢酸発酵(酢酸菌)・プロピオン酸発酵(チーズ)・酪酸発酵(クロストリジウム属)。
化学合成: 光エネルギーを使わず、無機物の酸化によって得たエネルギーでCO₂を固定し有機物を合成する。独立栄養生物の一形態。例: 亜硝酸菌(NH₃→NO₂⁻)・硝酸菌(NO₂⁻→NO₃⁻)・硫黄酸化菌(H₂S→SO₄²⁻)・水素酸化菌(H₂→H₂O)・鉄酸化菌(Fe²⁺→Fe³⁺)。深海熱水噴出孔の生態系は硫黄酸化細菌の化学合成を一次生産者とする。
例題
アルコール発酵において、CO₂が放出されるステップを示しなさい。また乳酸発酵ではCO₂が放出されない理由を説明しなさい。
解答: アルコール発酵: ピルビン酸がピルビン酸デカルボキシラーゼによってアセトアルデヒドとCO₂に分解される段階でCO₂が放出される。乳酸発酵: ピルビン酸が直接乳酸に還元されるため、炭素が失われずCO₂は放出されない。
アルコール発酵において、CO₂が放出されるステップを示しなさい。また乳酸発酵ではCO₂が放出されない理由を説明しなさい。
解答: アルコール発酵: ピルビン酸がピルビン酸デカルボキシラーゼによってアセトアルデヒドとCO₂に分解される段階でCO₂が放出される。乳酸発酵: ピルビン酸が直接乳酸に還元されるため、炭素が失われずCO₂は放出されない。
ポイント
- 発酵=O₂なし・解糖系のみ・2 ATP・NAD⁺再生が目的
- 乳酸発酵=ピルビン酸→乳酸(CO₂放出なし)
- アルコール発酵=ピルビン酸→アセトアルデヒド+CO₂→エタノール
- 化学合成=無機物酸化エネルギーでCO₂固定
- 亜硝酸菌・硝酸菌=窒素循環で重要な化学合成細菌
- 深海熱水噴出孔=硫黄酸化細菌が一次生産者
- 発酵産物は食品加工(パン・酒・チーズ・ヨーグルト)に利用
注意点
① 発酵は「嫌気呼吸」とも呼ばれるが、厳密には呼吸(電子伝達系が関与)とは区別される場合がある。② NAD⁺の再生が発酵の本質的な目的。③ 化学合成と光合成はともに独立栄養生物の炭素固定手段だが、エネルギー源が無機物の酸化(化学合成)か光(光合成)かで異なる。
練習
- 乳酸発酵とアルコール発酵の最終産物をそれぞれ答えなさい。
- 発酵においてNAD⁺の再生が必要な理由を説明しなさい。
- 化学合成を行う生物を2種類挙げ、それぞれが酸化する無機物を答えなさい。