高校発展 / 動物の行動 1 / 6

生得的行動と固定的動作パターン

生得的行動と固定的動作パターン

動物の行動は、遺伝的にプログラムされた生得的行動(本能行動)と、経験によって獲得される学習行動に大別されます。生得的行動は特定の刺激に対して自動的に発現する定型的な反応で、生存・繁殖に直結した適応的な行動です。まずは生得的行動の構造と代表例を学びましょう。

基本知識

生得的行動の特徴: ①遺伝的に決定される ②経験・学習を必要としない ③種特有であり同種の全個体がほぼ同一のパターンで示す ④環境への柔軟な対応には限界がある。

固定的動作パターン(FAP: Fixed Action Pattern): ローレンツとティンバーゲンが提唱した概念。特定の鍵刺激(Sign Stimulus / Releaser)によって引き起こされ、一度開始すると刺激が除かれても最後まで遂行される。内部の本能エネルギー(モチベーション)が蓄積し、鍵刺激により放出される(エネルギー貯留モデル)。例: ニシン鴎の雛が親鳥の嘴の赤い斑点をつつく・イトヨのオスが赤いものに攻撃する。

走性(Taxis): 刺激の方向に対して体全体を向ける定向反応。例: 光向性(走光性)・化学走性・重力走性。

反射(Reflex): 最も単純な生得的行動。膝蓋腱反射などの脊髄反射が典型例。FAP と異なり途中で止められる。

ティンバーゲンの4つの問い: 行動の研究には①近因(機序・発達)と②究因(進化的機能・進化の歴史)の両方の視点が必要とした。

例題
イトヨの雄の縄張り行動を固定的動作パターン(FAP)の概念を使って説明しなさい。
解答: 繁殖期のイトヨ雄は腹部が赤くなる。別の雄が縄張りに侵入すると、その赤い腹部が鍵刺激となってFAPが解発され、侵入者を攻撃する定型的な行動が自動的に発現する。実験では赤く塗られた魚の模型にも攻撃行動を示すが、非常にリアルに作られた模型でも赤くなければ攻撃しない。つまり「赤さ」という鍵刺激が行動を解発する。
ポイント
  • 生得的行動=遺伝的にプログラム・経験不要
  • FAP=鍵刺激で解発・開始後は最後まで遂行
  • 鍵刺激(サイン刺激)=FAPを解発する特定の刺激
  • ローレンツ・ティンバーゲン=動物行動学の父
  • 走性=刺激方向に対する定向運動(走光性など)
  • 反射=最も単純な生得的行動・途中停止可
  • ティンバーゲンの4つの問い=近因と究因の視点

注意点

① FAPと反射の違い: FAPは一旦始まると刺激を除いても続行するが、反射は刺激がなくなれば止まる。② 生得的行動と学習行動は対立ではなく、多くの行動はその両方の成分を含む。③ 走性と向性(Tropism: 植物の定向成長)を混同しない。

練習

  1. 固定的動作パターン(FAP)の定義と、それを引き起こす刺激の名称を答えなさい。
  2. 走性の例を2つ挙げ、それぞれどのような刺激に対する反応かを述べなさい。
  3. ティンバーゲンが提唱した「行動の4つの問い」における近因と究因の違いを説明しなさい。

このレッスンのQ&A

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