データの収集と整理・尺度水準
「データは21世紀の石油」といわれるほど、データは社会を動かす資源になりました。しかし、集めただけのデータはそのままでは使えません。分析の目的に合わせて集め、種類を見きわめ、きれいに整えてはじめて価値が生まれます。この講義では、データ分析の進め方、データの種類(尺度水準)、そして前処理(データクレンジング)を学びます。
データ分析のサイクル — PPDAC
データ分析は思いつきで始めるものではなく、次の5段階のサイクルで進めます。頭文字をとってPPDACサイクルと呼ばれます。
① Problem(問題):解決したい問題・明らかにしたい問いを決める。
② Plan(計画):どんなデータをどう集めるか計画する。
③ Data(データ収集):計画に沿ってデータを集め、整理する。
④ Analysis(分析):統計量やグラフを使って分析する。
⑤ Conclusion(結論):問いに対する答えをまとめ、必要なら新たな問いへ戻る。
データの集め方
データの収集方法には、アンケート調査や実験のように自分で集める方法のほか、センサ(温度・位置情報など)による自動収集、国や自治体が公開するオープンデータ(e-Statなど)の利用、Web APIを通じたデータ取得などがあります。他人のデータを使うときは、出典・利用条件(ライセンス)・個人情報の扱いに注意が必要です。
構造化データと非構造化データ
表計算ソフトの表のように、行と列にきちんと整理されたデータを構造化データと呼びます。一方、文章・画像・音声・動画のように表の形になっていないデータは非構造化データです。世の中のデータの大部分は非構造化データであり、機械学習の発展によってその活用が急速に進んでいます。
尺度水準 — データの「ものさし」を見きわめる
データは、まず数値で表せない質的データと、数値で表せる量的データに大別され、さらに次の4つの尺度水準に分類されます。どの尺度かによって、許される計算やグラフが変わります。
・名義尺度(質的):区別のためだけの分類。例: 血液型、出身県、性別。等しいかどうかしか比べられない。
・順序尺度(質的):順序に意味があるが、間隔には意味がない。例: 満足度(満足・普通・不満)、成績の5段階評価。大小比較はできるが「差」は計算できない。
・間隔尺度(量的):目盛りの間隔が等しいが、0が「何もない」を意味しない。例: 摂氏温度、西暦。差は意味を持つが「2倍」といった比は意味を持たない(20℃は10℃の2倍暑いわけではない)。
・比例尺度(比率尺度)(量的):0が「何もない」を意味し、比にも意味がある。例: 身長、重さ、金額、時間の長さ。
・ゼッケン番号 → 選手を区別するだけの名義尺度(番号の大小に意味はない)
・順位(1位・2位・3位…) → 順序尺度(1位と2位の「差」と2位と3位の「差」が同じとは限らない)
・当日の気温(℃) → 間隔尺度(0℃は「温度がない」ではない)
・完走タイム(分) → 比例尺度(0分が原点で、「2倍の時間がかかった」に意味がある)
同じ「数字」でも意味はまったく違います。ゼッケン番号の平均を計算しても意味がないことがわかります。
データクレンジング — 分析前の下ごしらえ
集めたばかりの生データには問題が混ざっています。これらを整える作業をデータクレンジング(前処理)と呼び、分析作業の中でも多くの時間を占める重要な工程です。
・欠損値:値が入っていないデータ。その行を除外する、平均値などで補完する、といった対処をする。
・外れ値:ほかから極端に離れた値。入力ミスなら修正・除外するが、本物の値なら安易に消してはいけない。
・表記ゆれ:「東京都」「東京」「Tokyo」のような同じ意味の異なる表記。統一しないと集計がずれる。
・重複データ:同じレコードの二重登録。取り除いてから集計する。
- 分析はPPDAC(問題→計画→データ→分析→結論)のサイクルで進める。
- データは質的(名義・順序)と量的(間隔・比例)に分かれる。
- 名義=区別のみ、順序=大小のみ、間隔=差に意味(0は任意)、比例=比にも意味(0が原点)。
- 尺度水準によって許される計算が違う。平均が計算できるのは量的データ。
- 欠損値・外れ値・表記ゆれを整えるデータクレンジングが分析の土台。
練習問題
- 次のデータの尺度水準をそれぞれ答えなさい。①好きな教科 ②アンケートの5段階評価 ③摂氏の気温 ④体重
- アンケートの回答に空欄(欠損値)が見つかった。対処の方法を2つ挙げなさい。
- SNSに投稿された文章や写真は、構造化データと非構造化データのどちらか答えなさい。
解答・解説
- 解答:①名義尺度 ②順序尺度 ③間隔尺度 ④比例尺度
解説:①は分類のみ。②は順序はあるが「5と4の差」と「2と1の差」が等しい保証はない。③は0℃が「温度なし」ではない。④は0kgが原点で比が意味を持つ。 - 解答:①欠損のある行(回答)を分析から除外する。②残りのデータの平均値・中央値などで補完する。
解説:どちらにも欠点がある(除外はデータが減る、補完は本当の値と違うかもしれない)。欠損がなぜ生じたかを考えて選ぶことが大切。 - 解答:非構造化データ
解説:文章・画像・音声・動画は行と列の表形式になっていないため非構造化データ。「いいね数」「投稿日時」のような項目は構造化データとして扱える。