合成高分子化合物(プラスチック・繊維)
20世紀以降の有機化学を変革した合成高分子(ポリマー)は、プラスチック・繊維・ゴム・接着剤として現代生活を支えます。
基本知識
重合の様式:
① 付加重合(連鎖重合): アルケン(C=C)が反応中心となり連鎖的に重合。副産物なし。
例: エチレン→ポリエチレン、塩化ビニル→ポリ塩化ビニル(PVC)、プロピレン→ポリプロピレン(PP)、スチレン→ポリスチレン(PS)、テトラフルオロエチレン→ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、テフロン)。
② 縮合重合: 2種類の官能基間で水(または小分子)が脱離して結合。
例: テレフタル酸+エチレングリコール→ポリエステル(PET)、ヘキサメチレンジアミン+アジピン酸→ナイロン66、ε-カプロラクタム開環→ナイロン6。
③ 共重合: 2種類以上のモノマー混合。SBR(スチレン+ブタジエン、合成ゴム)、ABS樹脂(アクリロニトリル+ブタジエン+スチレン)。
④ 開環重合: 環状モノマーが開いて重合(ナイロン6、ポリエチレンオキシド等)。
熱可塑性(linear/branched、加熱で柔らかく成形可能、繰り返し使用可)と熱硬化性(三次元網目、一度硬化したら再溶融不可)の区別。
熱可塑性: PE, PP, PVC, PS, ナイロン, PET, PMMA(アクリル)
熱硬化性: フェノール樹脂(ベークライト), 尿素樹脂, メラミン樹脂, エポキシ樹脂, 不飽和ポリエステル
合成繊維: ナイロン(脂肪族ポリアミド)・ポリエステル(PET)・アクリル繊維(ポリアクリロニトリル)・ビニロン(ポリ酢酸ビニル+ホルマリン処理)等。
再生繊維: 天然セルロースを溶解後再形成→レーヨン・キュプラ・アセテート。
合成ゴム: イソプレン重合→ポリイソプレン(天然ゴムと同じ)、ブタジエン+スチレン→SBR(タイヤ)、クロロプレン→ネオプレン。加硫(S添加・架橋)で弾性を向上。
付加重合(C=Cの連鎖反応、副産物なし)
縮合重合(水脱離、ポリエステル/ナイロン)
熱可塑性樹脂(加熱で軟化、PE/PVC/PETなど)
熱硬化性樹脂(三次元網目、ベークライトなど)
ナイロン66(ヘキサメチレンジアミン+アジピン酸、6炭素×2)
加硫(ゴムにS架橋、弾性向上、グッドイヤー1839年)
深掘り (原理・応用)
ナイロン: 1935年カロザース(デュポン)が合成、絹に代わる合成繊維。当初は女性ストッキング・落下傘・歯ブラシ等に使われ、第二次大戦の戦略物資。「鉄より強く、クモの糸より細い」のキャッチコピー。
PET: ペットボトル(飲料)・ポリエステル繊維(衣料)・X線フィルム・自動車部品。ペットボトルリサイクルは日本では分別収集と再資源化が進んでいる成功例。
ベークライト: 1907年ベークランド合成、世界初の完全合成樹脂。電気絶縁性で電話機・初期電子機器の筐体に使用。
機能性高分子:
・イオン交換樹脂: スチレン-ジビニルベンゼン共重合体に-SO3H(陽イオン交換)や-N+R3(陰イオン交換)を導入。純水製造・浄水・分析。
・高吸水性ポリマー: ポリアクリル酸架橋体、自重の数百倍の水を吸う。紙おむつ・砂漠緑化。
・生分解性プラスチック: ポリ乳酸PLA(トウモロコシ由来)、PHB等。海洋プラスチック問題への解決策。
・導電性高分子: ポリアセチレン等(2000年白川英樹ノーベル賞)、有機EL・有機太陽電池の基盤。
環境問題: マイクロプラスチック(5 mm以下のプラ片)が海洋汚染、生物濃縮、毒性物質吸着の問題。世界でプラ削減・代替素材開発が急務。
- 付加重合(C=C連鎖)/縮合重合(水脱離)
- 熱可塑性=PE/PVC/PET/ナイロン
- 熱硬化性=ベークライト/尿素/メラミン/エポキシ
- ナイロン66=ヘキサメチレンジアミン+アジピン酸
- PET=テレフタル酸+エチレングリコール
- 加硫=ゴムにS架橋(グッドイヤー1839)
- 機能性高分子: イオン交換・高吸水・生分解・導電性
注意点 (混同しやすい・頻出ミス)
① ナイロン6とナイロン66: 6=単一カプロラクタムから(C数6×1)、66=2種類(C6+C6)から。両者性能は近いが製法・コスト・特性に差。② ビニロン: ポリ酢酸ビニルをけん化後ホルマリン処理でアセタール化、日本人(桜田一郎)が独自開発した合成繊維。③ 付加重合と縮合重合の見分け: モノマーにC=Cがあれば付加、官能基2種類(COOH+OH、COOH+NH2)なら縮合。④ ポリエチレンには低密度(LDPE、枝分かれ多)と高密度(HDPE、直鎖)があり、性質が違う。
練習
- 付加重合と縮合重合の違いを、ポリエチレンとナイロン66の例で説明せよ。
- ナイロン66の合成反応式を書き、繰り返し単位構造を示せ。
- 熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の構造的違いと、それぞれの代表例を3つずつ挙げよ。