種子の発芽と休眠
種子は不適切な条件では休眠して発芽を抑え、適切な条件が整ったときに一斉に発芽します。この精巧なコントロールが植物の生存戦略の要です。
基本知識
種子の構造と貯蔵栄養: 胚(将来の植物体)・胚乳(栄養貯蔵・イネ科等)または子葉(栄養貯蔵・マメ科等)・種皮。貯蔵栄養はデンプン・脂質・タンパク質。
発芽の条件: ①水分(吸水=種皮の軟化・酵素の活性化)②温度(最適温度は種によって異なる)③空気(O₂)(呼吸によるエネルギー供給)。光を必要とする光発芽種子(レタス・タバコ等: フィトクロムPfrが発芽促進)と、光で発芽が抑制される暗発芽種子(カボチャ・トマト等)がある。
ジベレリンの役割(イネ種子モデル): 吸水→胚がジベレリンを合成・分泌→糊粉層細胞がアミラーゼ・プロテアーゼを合成・分泌→胚乳のデンプン・タンパク質を分解してグルコース・アミノ酸を供給→胚が成長・発芽。
種子休眠と覚醒: ABA(アブシジン酸)が種子休眠を誘導・維持。発芽には ABA 分解や GA による ABA 拮抗が必要。休眠打破の方法: ①低温処理(後熟・層積処理)②光照射(光発芽種子)③傷処理(種皮の損傷・消化管通過)④乾燥(desert plants)⑤火(一部の種)。
幼葉鞘の成長とオーキシン: ダーウィン父子の実験→キャノンの実験→ウェントの実験(1926)でオーキシンが分離・同定された。幼葉鞘の屈光性実験が植物ホルモン発見の端緒。
イネ種子の発芽においてジベレリンが糊粉層に作用する過程を順を追って説明しなさい。
解答: ①種子が吸水すると胚でジベレリンが合成・分泌される。②ジベレリンは隣接する糊粉層細胞の核に作用し、α-アミラーゼ・プロテアーゼなどの加水分解酵素の遺伝子転写を誘導する。③合成された酵素が胚乳へ分泌されデンプン(→グルコース)とタンパク質(→アミノ酸)を分解する。④分解産物が胚に供給され細胞分裂・伸長が始まり発芽に至る。
- 発芽3条件=水・温度・O₂(光は種依存)
- 光発芽種子=フィトクロムPfrが発芽促進(レタス・タバコ)
- ジベレリン=糊粉層でアミラーゼ合成誘導→デンプン分解→発芽
- ABA=種子休眠誘導・発芽抑制
- 休眠打破=低温処理・光照射・傷処理
- 後熟=収穫後の低温貯蔵でABA分解・GA増加
- ダーウィン→ウェントの実験=オーキシン発見の系譜
注意点
① レタス種子は赤色光(660 nm)照射で発芽促進(Pfrが多い状態)、遠赤色光(730 nm)照射で抑制(Prが多い状態)→最後に照射した光の波長が発芽を決定する(可逆反応)。② ABAとGAは拮抗する。ABA高→休眠維持、GA高→ABA拮抗・アミラーゼ誘導→発芽促進。③ 種皮の硬さが休眠の原因となる場合(物理的休眠)は、消化管通過や火が種皮を傷つけて発芽を促す。
練習
- 光発芽種子の発芽を促進するフィトクロムの型(Pr型・Pfr型)を答え、赤色光照射が発芽を促進する理由を説明しなさい。
- 種子の休眠を誘導するホルモンと、発芽を促進するホルモンをそれぞれ答えなさい。
- イネ種子でジベレリンが糊粉層に作用してどのような酵素の合成を誘導するか、およびその酵素の基質を答えなさい。