白亜紀の温暖化と海洋無酸素事変
白亜紀(約1.45〜0.66億年前)は地球史上の「超温暖期」の一つです。大気CO₂濃度は現在の4〜8倍に達し、海洋環境も現在と大きく異なっていました。この時代の研究は現在進行中の地球温暖化の自然の参照点として注目されます。
基本知識
白亜紀の地球は温室気候の典型例です。平均気温は現在より約6〜10℃高く、極地にも氷がなく(無氷期)、海面は現在より約70〜200m高い状態でした。大気CO₂濃度は数値推定でおよそ500〜2000 ppm(現在は約420 ppm)と高く、大規模な火山活動(超大型火成岩岩石区:LIP)が主な炭素源とされます。
海洋無酸素事変(OAE: Oceanic Anoxic Event)は白亜紀に複数回(OAE1a・OAE2など)記録された、広域海底が酸素欠乏状態(無酸素・低酸素)になった期間です。有機物が大量に分解されずに海底に堆積し、黒色頁岩(有機炭素に富む)として残されています。OAEの原因として大規模火山活動→CO₂増加→温暖化→海洋成層化→深層への酸素供給停止というカスケードが挙げられます。
白亜紀の高温環境に適応した生物(アンモナイト・モササウルス・首長竜など)は温暖な海洋に依存しており、K-Pg境界の急激な寒冷化(隕石衝突の冬)に耐えられず絶滅したと考えられています。白亜紀の有機炭素豊富な黒色頁岩は現在の石油資源の主な供給源の一つです。
海洋無酸素事変(OAE)が発生するメカニズムを、火山活動→温暖化→海洋循環の変化の流れで説明しなさい。
解答: 大規模火山活動(LIP噴出)→大気CO₂増加→温暖化→海水温の上昇により海水の密度差(表層と深層)が小さくなる(成層化)→深層への酸素補給(熱塩循環)が弱化→底層水が酸素欠乏状態(無酸素)になるというカスケードで OAE が発生する。
- 白亜紀:温室気候・極地に氷なし・海面+70〜200m
- 白亜紀のCO₂:約500〜2000 ppm(現在の約420 ppmの1〜5倍)
- CO₂の主要供給源:大規模火山活動(LIP)
- OAE(海洋無酸素事変):白亜紀に複数回・底層水の無酸素化
- OAE産物:黒色頁岩(有機炭素富む)→現代の石油資源に
- OAE原因:LIP噴火→温暖化→海洋成層化→深層酸素欠乏
- OAE研究は現在の温暖化・海洋貧酸素化の参照点
注意点
① 白亜紀の温暖化は現在の人為的温暖化とはスピードが根本的に異なる(地質スケールの数百万年 vs 産業革命以降の約150年)。② OAE の黒色頁岩は有機物が分解されずに保存されたから黒く有機炭素に富む(分解されれば普通の泥岩になる)。③ 無氷期の海面上昇は氷床融解による熱膨張も含む。
練習
- 白亜紀の気候の特徴を「無氷期」「海面」「CO₂」の3点から説明しなさい。
- OAE(海洋無酸素事変)の際に堆積する特徴的な岩石は何か。
- 大規模火成岩岩石区(LIP)の噴出が白亜紀の気候に与えた影響を述べなさい。