情報II / 情報社会の進展と情報技術 4 / 6

クラウドコンピューティング

クラウドコンピューティング

レポートはオンラインのドキュメントで書き、写真は自動でネット上に保存され、動画は配信で見る——私たちはすでに生活の多くを「クラウド」に預けています。クラウドとは正確には何で、どんな種類があり、何が便利で何が危ういのか。情報社会の土台となったこの仕組みを学びます。

クラウドコンピューティングとは

クラウドコンピューティングとは、サーバー・ストレージ・ソフトウェアなどの情報資源を自分で所有せず、インターネット経由でサービスとして利用する形態のことです。対義語はオンプレミスで、自社・自宅に機器を設置して運用する従来の形態を指します。クラウドの実体は、事業者が世界各地に構える巨大なデータセンターです。利用者から見ると「どこにあるか意識しなくてよい、雲(cloud)の向こうの計算資源」であることが名前の由来とされます。多くのクラウドは、使った分だけ料金を払う従量課金制で提供されます。

サービスの3分類 — IaaS・PaaS・SaaS

クラウドサービスは、「どの層までを事業者が提供するか」で3つに分類されます。①IaaS(Infrastructure as a Service:イアース/アイアース):仮想サーバー・ストレージ・ネットワークなどのインフラ(基盤)を提供する。OSより上はすべて利用者が構築するため、自由度が最も高い。②PaaS(Platform as a Service:パース):OSやデータベースなど、アプリケーションを開発・実行するためのプラットフォーム(土台)まで提供する。開発者はプログラム本体に集中できる。③SaaS(Software as a Service:サース):完成したソフトウェア(アプリケーション)そのものを提供する。Webメール、オンラインのオフィスソフト、オンラインストレージなど、一般利用者が使うクラウドの多くはSaaSです。下の層ほど自由度が高く手間も大きい、上の層ほど手軽だがカスタマイズの幅は狭い、という関係にあります。

📘 例 「レンタルで住まいを用意する」ことに例えると、IaaSは更地と資材を借りて家から建てる(自由だが大変)、PaaSは骨組みと配管付きの家を借りて内装だけ作る、SaaSは家具付きの部屋を借りてすぐ住む(手軽だが間取りは変えられない)、というイメージです。学校で使うオンラインのドキュメント作成サービスはSaaS、開発者がWebアプリを動かすために借りる実行環境はPaaS、仮想サーバーを1台丸ごと借りるのはIaaSにあたります。

提供形態 — パブリックとプライベート

クラウドは提供範囲によっても分類されます。パブリッククラウドは不特定多数の利用者が共用する一般向けのクラウドで、低コストで始められます。プライベートクラウドは特定の企業・組織専用に構築されるもので、コストは高いものの、セキュリティ要件や独自の設定を細かく管理できます。両者やオンプレミスを組み合わせるハイブリッドクラウドという形態もあり、機密性の高いデータは自社内、変動の大きい処理はパブリック、という使い分けが行われます。

クラウドの利点とリスク

クラウドの利点は次の通りです。①初期費用を抑えられ、必要な分だけすぐに拡張・縮小できる(スケーラビリティ)。②機器の購入・保守・更新を事業者に任せられる。③インターネットがあればどこからでも利用でき、複数人での共同編集や、災害時に備えたバックアップ(遠隔地のデータセンターに保存)にも強い。一方でリスクもあります。①障害・停止:クラウド事業者側で障害が起きると、多数のサービスが一斉に使えなくなる。②情報漏えい・設定ミス:公開設定の誤りによる漏えい事故は繰り返し起きている。③依存(ロックイン):特定の事業者に深く依存すると、乗り換えが困難になる。④通信環境がなければ使えない。「預ければ安心」ではなく、「何をどこに預け、責任はどう分担されるのか」を理解して使うことが重要です。

💡 ポイント
  • クラウド=情報資源を所有せずインターネット経由でサービスとして利用。対義語はオンプレミス。
  • IaaS=インフラ提供/PaaS=開発・実行環境まで提供/SaaS=アプリそのものを提供。
  • 下の層ほど自由度が高く手間も大きい。一般利用者が使うのは主にSaaS。
  • パブリック(共用・低コスト)とプライベート(専用・高管理性)、組み合わせのハイブリッド。
  • 利点:スケーラビリティ・保守不要・どこからでも利用・共同編集・バックアップ。
  • リスク:障害時の一斉停止・設定ミスによる漏えい・特定事業者へのロックイン。

練習問題

  1. クラウドコンピューティングとオンプレミスの違いを説明しなさい。
  2. IaaS・PaaS・SaaSの違いを、「事業者がどこまで提供するか」に着目してそれぞれ説明し、Webメールはどれにあたるか答えなさい。
  3. 企業がオンプレミスからクラウドに移行する利点を2つ、注意すべきリスクを2つ挙げなさい。
  4. アクセスが急増するイベントサイトの運営にクラウドが向いている理由を、「スケーラビリティ」という語を使って説明しなさい。

解答・解説

  1. 解答:クラウドコンピューティングは、サーバーやソフトウェアなどの情報資源を自分で所有せず、インターネット経由で事業者のサービスとして利用する形態。オンプレミスは、自社・自宅に機器を設置し、自分で所有・運用する従来の形態。
    解説:「所有せず借りて使う」対「所有して自分で運用する」の対比が核。従量課金にも触れられると加点。
  2. 解答:IaaSは仮想サーバー・ストレージ・ネットワークなどのインフラ(基盤)までを提供し、OSより上は利用者が構築する。PaaSはOSやデータベースなどアプリの開発・実行環境(プラットフォーム)までを提供する。SaaSは完成したソフトウェア(アプリケーション)そのものを提供する。Webメールは完成したアプリを使う形態なのでSaaSにあたる。
    解説:Infrastructure/Platform/Softwareの頭文字通り「提供する層」で区別する。下の層ほど自由、上の層ほど手軽という関係も書ければ完璧。
  3. 解答:利点の例:①機器の購入・保守が不要で初期費用を抑えられる。②必要に応じて性能や容量をすぐ拡張・縮小できる。③どこからでも利用でき、共同編集や遠隔地バックアップに強い(うち2つ)。リスクの例:①事業者側の障害でサービスが一斉に停止する。②公開設定のミスなどによる情報漏えい。③特定事業者への依存(ロックイン)で乗り換えが困難になる(うち2つ)。
    解説:利点とリスクを2つずつ具体的に書けているか。「便利さ」と「預けることのリスク」の両面を挙げるバランスが重要。
  4. 解答:クラウドは従量課金で計算資源を必要な分だけすぐに増減できるスケーラビリティを持つ。イベントサイトはチケット発売直後などにアクセスが急増し、その後は減るという変動が大きいため、ピークに合わせて一時的に増強し、終了後に縮小できるクラウドが、常にピーク性能の機器を持ち続けるオンプレミスより効率的である。
    解説:「変動する需要」×「即時に増減できる」という組み合わせが説明できていれば正解。ピークに合わせた常時保有の無駄との対比が鍵。
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