分析の結果は、相手に伝わってはじめて価値を持ちます。数字の表を眺めるだけでは気づけない傾向も、適切なグラフにすれば一目でわかります。この講義では、目的に応じた可視化の使い分け、誤解を招くグラフの見抜き方、テキストデータの可視化、そしてデータに基づくモデル化と検証の流れを学びます。
目的別・グラフの使い分け
グラフは「何を見せたいか」で選びます。
・量の比較 → 棒グラフ
・時間による変化 → 折れ線グラフ
・全体に占める割合 → 円グラフ・帯グラフ(帯は割合の比較にも強い)
・2つの量の関係 → 散布図
・1つの量の分布 → ヒストグラム
・複数グループの分布の比較 → 箱ひげ図を並べる
・行×列の大量の数値の濃淡 → ヒートマップ(値の大小を色の濃さで表す。例: 曜日×時間帯の来店者数)
2つの軸に加えて点の大きさで3つ目の量を表すバブルチャートや、棒グラフと折れ線グラフを重ねた複合グラフ(例: 降水量の棒+気温の折れ線)も、情報量の多いデータの可視化に使われます。
誤解を招くグラフに注意
グラフは強力な伝達手段であるだけに、意図的にも偶然にも人を誤解させることがあります。代表的なパターンを知っておきましょう。
・縦軸の途中省略:0から始めない棒グラフは、わずかな差を何倍もの差に見せる。
・3D円グラフ:手前の扇形が実際より大きく見える。
・目盛り間隔の不統一:横軸の年が1年おきと5年おきで混在すると、変化の速さを誤認させる。
・都合のよい期間の切り取り:上がっている区間だけ見せる。
グラフを作るときは正直に、読むときは「軸は0から始まっているか」「目盛りは等間隔か」を必ず確認する習慣をつけましょう。
テキストデータの可視化 — テキストマイニング
アンケートの自由記述のような文章データ(非構造化データ)も分析の対象になります。文章を単語に分解し、出現回数や単語どうしのつながりを調べる手法をテキストマイニングと呼びます。出現頻度の高い単語ほど大きく表示するワードクラウドや、一緒に使われやすい単語を線で結ぶ共起ネットワークを使うと、大量の自由記述の傾向を短時間でつかめます。
データに基づくモデル化と検証
可視化で傾向をつかんだら、その関係を数式で表すモデル化に進みます。たとえば回帰直線 y=ax+b は「データから作った予測モデル」です。ここで大切なのは、モデルを作って終わりにせず、新しいデータで予測が当たるかを検証し、外れたらモデルを修正するというサイクル(PPDACのAnalysis→Conclusion→新たなProblem)を回すことです。モデルは現実の単純化であり、完全に正しいモデルは存在しません。「どの範囲で、どの程度信頼できるか」を添えて結論を述べるのが、データサイエンスの誠実な作法です。
- 棒=比較、折れ線=推移、円・帯=割合、散布図=関係、ヒストグラム=分布、箱ひげ図=分布の比較、ヒートマップ=行×列の濃淡。
- 縦軸の途中省略・3D円グラフ・目盛り不統一・期間の切り取りは誤解のもと。
- 自由記述はテキストマイニング(ワードクラウド・共起ネットワーク)で可視化できる。
- モデルは作って終わりではなく、新しいデータで検証・修正を繰り返す。
- 結論には適用範囲と限界を添える。
練習問題
- 次のデータを可視化するのに最も適したグラフをそれぞれ答えなさい。①1年間の毎月の平均気温の変化 ②クラス全員の通学時間の分布 ③曜日×時間帯ごとの図書室利用者数の多さ
- 縦軸が0から始まらない棒グラフには、どのような問題があるか説明しなさい。
- 2つのクラスの得点を比較するとき、平均点の比較だけでなく箱ひげ図を並べて見るとどんな情報が追加でわかるか、2つ挙げなさい。
解答・解説
- 解答:①折れ線グラフ ②ヒストグラム ③ヒートマップ
解説:①は時間による変化、②は1つの量の分布、③は行(曜日)×列(時間帯)の数値の大小を色の濃淡で表すのが見やすい。 - 解答:実際にはわずかな差でも、棒の長さの差が強調されて何倍もの大きな差があるように見えてしまい、読み手に誤った印象を与える。
解説:差を強調したい場面で意図的に使われることもある。グラフを読むときは軸の始点と目盛りを必ず確認する。 - 解答:(例)①散らばりの大きさ(四分位範囲やひげの長さ)の違いがわかる。②中央値・最大値・最小値や、分布の偏り・外れ値の有無がわかる。
解説:平均が同じでも分布の形はまったく違うことがある。箱ひげ図は5数要約を一目で比較できる。