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成功を得るには何故人を辞める必要があるのか

成功を得るには何故人を辞める必要があるのか

少し前、数年ぶりに会った友人から「最近どう?」と聞かれて、うまく答えられないことがあった。仕事の話をしようとすると「すごいね」で会話が終わり、彼の近況を聞くと昔と変わらない話が続く。どちらが良い悪いではなく、ただ「話す座標が違う」という感覚があった。

これは誰しもある程度経験することだと思う。学生時代に仲良かった人と、社会人になって話が噛み合わなくなった。何かを始めたら、それまでの友人関係の雰囲気が少し変わった。「成功すると友達が減る」みたいな話も、そういう文脈で語られることが多い。

ただ、「友達が減る」というのはちょっと雑な言い方で、もう少し丁寧に考えると「優先順位が変わる」というほうが実態に近い気がしている。

分かれ道の前に立つ人のシルエット
優先順位が変わると、自然と時間の使い方も変わってくる

人間関係には「平均値」がある

「環境が人をつくる」という言葉は、半分は正しいと思う。一緒にいる人の思考や習慣は、知らないうちに自分のそれに影響する。収入、野心のレベル、時間の使い方——そういったものが近くにいる人たちとの間で、ある種の均衡を形成している。

面白いのは、その均衡を崩す方向へ動こうとすると、周囲から修正しようとする力が働くことがある点だ。悪意があるわけではないことがほとんどで、「現実的になれよ」「そんなの続かないよ」という言葉は、多くの場合、相手を傷つけたいというより「変化への不安」から来ていることが多い。

ただ言われる側にとっては、その言葉が積み重なると、行動を起こす前に足が止まりやすくなる。それが問題だと感じている。

「人を辞める」ではなく「時間の比重を変える」

「成功するためには人間関係を整理すべき」という話は、自己啓発的な文脈でよく出てくる。ただその言い方は少し乱暴で、実際のところは「縁を切る」というより「どこに時間を使うかを意識的に選ぶ」ということだと思う。

1日24時間は誰にとっても同じで、誰かと過ごす時間を増やせば、別の何かに使える時間が減る。これは単純な算数の話だ。毎週飲み会に行っていたのを月1にするとか、移動中に本を読むようにするとか——そういう選択の積み重ねが、半年後、1年後の状態に違いをつくる。

それを「縁を切った」と感じる人もいるし、「あいつ最近変わった」と言われることもあるかもしれない。でも実際は、関係の濃淡が変わっただけで、縁そのものが切れたわけではないことのほうが多い。

成功した人の周囲で起きていること

スティーブ・ジョブズがアップルを一度追放された後、NeXTを立ち上げた時期の話を読んだことがある。そのころ彼の周囲にいたのは、ビジョンを共有できる少数の人間だけだったという。旧知の「現実的なビジネスパーソン」たちのアドバイスは聞かなかった、という話もある。孤独に見える期間を経て、後のアップル復帰と一連の製品革命につながった。

「関係を整理した」のか「自然と離れていった」のかは分からないが、少なくとも「誰と時間を使うか」という選択が、その後の方向性に影響していたことは想像できる。

もちろん、誰もがジョブズのようになれるわけではないし、そうなる必要もない。ただ、「誰と時間を過ごすか」がじわじわと自分の思考や習慣に影響するという点は、スケールが違っても同じことが起きると思っている。

少人数で話し合うグループ
誰と話すか、誰の話を聞くかは、自分の思考の方向性に影響する

孤独への恐怖と、それとの付き合い方

優先順位を変えることが難しい理由のひとつは、孤独が怖いからだと思う。人間は社会的な生き物で、グループから外れることへの不安は、かなり根深いところにある。「みんなと同じでいたい」という感覚は本能的なもので、それに逆らうのはそれなりのコストがかかる。

だから「人を辞める」を実行するより、「一緒にいる時間の中身を少し変えてみる」くらいから始めるほうが現実的だと思う。毎回の飲み会で愚痴だけで終わっていたのを、何か自分がやっていることの話をしてみるとか。それに共鳴してくれる人が残り、そうでない人とは自然と距離が変わる。

「孤独を余白として使う」という発想も、最近すこし意識するようになった。誰かといる時間と一人の時間を、充填と充電として使い分けるイメージ。外からの刺激がないと落ち着かないのか、一人でいても方向性を引き出せるのかは、かなり大きな違いだと感じている。

「自分がいたい環境」を少しずつ設計する

「周囲にいる5人の平均が自分の現在地」という話を聞いたことがある。統計的な根拠があるものではないけれど、感覚としてはわかる気がする。

誰かを切り捨てるということではなく、「自分がなりたい方向と同じ方向を向いている人と時間を作る」という意識を持つだけで、少しずつ環境が変わっていく。メンターを持つとか、同じ目標を持つコミュニティに入るとか——そういうことも、広い意味での「環境設計」だ。

「人を辞める」というより、「自分がいたい場所に近い人との時間を、少し意識して増やしていく」。そのくらいの感覚で動いてみると、気づいたときに周囲の景色が少し変わっていることがある。

罪悪感が出てくることもある。長年の友人との時間を減らすことへの後ろめたさは、そう簡単には消えない。消える必要もないかもしれない。ただ、その罪悪感に行動を止められてしまうのは、もったいないと思っている。

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