高校基礎 / 遺伝子とそのはたらき 5 / 6

ゲノムと遺伝子・染色体

ゲノムと遺伝子・染色体

遺伝情報の全体像を理解するために、ゲノム・遺伝子・染色体の関係を整理しましょう。共通テストでも階層の混同がよく出題されます。

基本知識

用語の階層:
ゲノム(genome): ある生物がもつ遺伝情報の全体。ヒトでは約30億塩基対(3×109bp)
遺伝子(gene): タンパク質などのアミノ酸配列・機能を指定するDNAの一定領域。ヒトでは約2万個
染色体(chromosome): DNAがヒストンというタンパク質に巻き付いて凝縮した構造。ヒトでは46本(23対)。
ヒトのゲノムサイズ約30億塩基対のうち、タンパク質をコードする領域(エキソン)はわずか1〜2%です。残りはイントロン非コードRNA領域反復配列などで、かつて「ジャンクDNA」と呼ばれていましたが、現在は調節機能などで重要な役割があるとわかっています。
染色体には常染色体(22対)性染色体(1対=X・Y)があります。XX=女性、XY=男性。減数分裂で精子・卵子に染色体が半数(23本)ずつ分配され、受精で46本に戻ります。これが有性生殖の基本です。

📘 重要用語
ゲノム(ある生物のもつ遺伝情報の全セット)
遺伝子(タンパク質などをコードするDNAの一定領域)
染色体(DNAがヒストンタンパク質に巻き付いた凝縮構造)
ヒストン(DNAを巻き付ける塩基性タンパク質)
ヌクレオソーム(ヒストン8量体+DNA約146 bpの基本単位)
常染色体・性染色体(性決定に関わらない染色体・関わる染色体)
ヒトゲノム計画(2003年完了、ヒトの全DNA配列を解読)

深掘り

ヒトゲノムは1本に伸ばすと約2 mの長さがあります。これを直径わずか約10 μmの細胞核に収納するため、DNAは多段階に折りたたまれます。
① DNA(直径2 nm)
② ヒストン8量体に巻きついてヌクレオソーム(直径10 nm)を形成
③ さらに折りたたまれて30 nmファイバー
④ 高次のループとドメイン構造
⑤ 分裂期には極めて凝縮した染色体(光学顕微鏡で見える状態)
この階層的折りたたみは、化学的にはヒストンの正電荷(リジン・アルギニンの側鎖)とDNAの負電荷(リン酸基)の静電的相互作用で安定化されています。ヒストン修飾(アセチル化・メチル化)でDNAとの結合強度が変わると、転写の活性が変化します。これがエピジェネティクスの基本的なメカニズムで、近年の医学・発生生物学の中心テーマです。
ヒトゲノム計画は1990年に開始、2003年に解読完了を宣言した国際協力プロジェクトです。費用は約30億ドルかかりましたが、現在は次世代シーケンサーの発達で個人ゲノムが数万〜10万円で解読でき、医療(ゲノム医療)や薬の個別化(ファーマコゲノミクス)に応用されています。CRISPR-Cas9などのゲノム編集技術(2020年ノーベル化学賞)とともに、生物学は新時代に入っています。

💡 ポイント
  • ゲノム=遺伝情報全体(ヒト=約30億塩基対)
  • 遺伝子=タンパク質などをコードする領域(ヒト=約2万個)
  • 染色体=DNA+ヒストン(ヒト=46本=23対)
  • 常染色体22対+性染色体1対(XX=♀、XY=♂)
  • ヒストン8量体+DNA146 bp=ヌクレオソーム
  • タンパク質をコードする領域はゲノムの1〜2%
  • ヒトゲノム計画は2003年に解読完了

注意点

ゲノム(全情報)>>>遺伝子(個別領域)>>塩基対(最小単位)の階層を混同しない。② 染色体遺伝子は別概念。1本の染色体に多数の遺伝子が含まれる。③ ヒトの染色体数は46本(23対)。子に渡るのは23本(配偶子)。④ ゲノムサイズと遺伝子数は比例しない。種によって反復配列の量が大きく違うため。たとえばユリのゲノムはヒトの30倍大きい。

練習

  1. ヒトのゲノムサイズはおよそ何塩基対か。
  2. ヒトのもつ染色体は何本か。常染色体と性染色体に分けて答えなさい。
  3. DNAを巻き付けて染色体構造を作るタンパク質を何というか。
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このレッスンのQ&A

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