アルカン(飽和炭化水素)
炭素原子間が単結合のみで構成される脂肪族炭化水素をアルカンといい、最も基本的な有機化合物群です。
基本知識
一般式 CnH2n+2。炭素はsp3混成で正四面体型(結合角約109.5°)。常温で C1〜4 気体、C5〜16 液体、C17〜 固体。
主な反応:
① 置換反応 (光照射下、ラジカル機構): CH4 + Cl2 → CH3Cl + HCl。続いてCH2Cl2, CHCl3, CCl4と段階的に進行。
② 燃焼反応: CnH2n+2 + (3n+1)/2 O2 → nCO2 + (n+1)H2O。発熱量大、燃料として利用。
③ 熱分解(クラッキング): 高分子量アルカン→低分子量アルカン+アルケン。石油精製の根幹。
メタン CH4: 天然ガス主成分、温室効果ガス(CO2の25倍効果)。実験室製法: 酢酸ナトリウムをソーダ石灰と加熱 CH3COONa + NaOH → CH4 + Na2CO3。
アルカン(CnH2n+2、飽和、化学的に比較的安定)
sp3混成(正四面体、結合角109.5°)
置換反応(H原子が別の原子団と置換、ラジカル機構)
燃焼熱(CH4:890 kJ/mol、C3H8:2220 kJ/mol、C数が多いほど大)
クラッキング(C-C切断、ガソリン製造の中核)
オクタン価(ガソリンの耐ノッキング性指標、イソオクタン100基準)
深掘り (原理・応用)
石油精製: 原油(様々な炭化水素混合物)を分留(沸点差で分離)し、LPG(C3〜4)・ガソリン(C5〜10)・灯油(C11〜13)・軽油(C14〜18)・重油(C19〜)・アスファルト(C24〜)に分ける。需要に合わせ重質油をクラッキングでガソリン留分に変換。
異性体数の増加: C4H10=2(n-/iso-)、C5H12=3、C6H14=5、C10H22=75、C20H42=366,319個。
シクロアルカン: 同じ分子式CnH2nでもシクロプロパン(三員環)・シクロブタン(四員環)は環ひずみ(角度ひずみ)で反応性高い。シクロヘキサンはイス形で歪みなく安定。
毒物学的にはメタン窒息(空気置換)、ガソリン中ベンゼン(発がん性)、ディーゼル排気微粒子(PM2.5)、CO中毒など、産業医学・環境医学で重要。
- アルカン CnH2n+2、sp3正四面体
- 置換反応(光・熱)・燃焼反応・クラッキング
- メタン=天然ガス、温室効果ガス
- 石油は分留で分離
- 炭素数が増えると沸点上昇(分子間引力増大)
- 異性体数は炭素数とともに爆発的に増加
- シクロヘキサンはイス形で安定
注意点 (混同しやすい・頻出ミス)
① アルカンは付加反応しない(飽和なので)。アルケンと混同しないこと。② 分子間力はC数とともに増加し沸点上昇するが、枝分かれが多いほど球形に近く接触面積減少で沸点低下(n-ブタン-0.5℃ vs イソブタン-12℃)。③ メタンの実験室製法でNaOH単独では融解して試験管を侵すためソーダ石灰(NaOH+CaO)を使う。
練習
- メタンと塩素の置換反応を、4段階の生成物すべての反応式で書け。
- プロパンC3H8の完全燃焼の反応式を書き、発熱量2220 kJ/molからCO2 1 molあたりのエネルギー収率を求めよ。
- C5H12の3つの構造異性体を描き、IUPAC名と慣用名を併記せよ。