高校発展 / 脂肪族化合物 5 / 6

エステルと油脂

エステルと油脂

カルボン酸とアルコールから水が取れて生じるエステル R-COO-R'は、香料・溶媒・脂質の主成分です。動植物の油脂はトリグリセリドというエステルです。

基本知識

エステル化(可逆): R-COOH + R'-OH ⇄ R-COO-R' + H2O(濃H2SO4触媒、加熱)。逆反応の加水分解は希酸または塩基(けん化)で進行。
主なエステル: 酢酸エチルCH3COOC2H5(マニキュア・接着剤の溶媒、果実臭)、酢酸イソアミル(バナナ香)、サリチル酸メチル(湿布・サロメチール香)、酢酸ベンジル(ジャスミン香)、安息香酸エチル(ヘリオトロープ香)。香料・人工フレーバーの主役。
油脂(脂肪と油): 高級脂肪酸とグリセリンのトリエステル(トリアシルグリセロール、TG)。
飽和脂肪酸(常温で固体「脂肪」): パルミチン酸C15H31COOH、ステアリン酸C17H35COOH。
不飽和脂肪酸(常温で液体「油」): オレイン酸C17H33COOH(C=C 1個)、リノール酸C17H31COOH(C=C 2個)、リノレン酸C17H29COOH(C=C 3個)。
ヨウ素価: 油脂100 gに付加するヨウ素のg数。不飽和度の指標(乾性油・半乾性油・不乾性油)。
けん化価: 油脂1 gをけん化するKOHのmg数。脂肪酸の平均分子量の指標(逆数に比例)。
けん化: 油脂+NaOH → グリセリン+脂肪酸ナトリウム塩(石鹸)

📘 重要用語・公式
エステル化(カルボン酸+アルコール、可逆、酸触媒)
けん化(油脂+NaOHで石鹸+グリセリン、不可逆)
ヨウ素価(油脂100 gに付加するI2のg、不飽和度指標)
けん化価(油脂1 gをけん化するKOHのmg、平均分子量逆数)
乾性油(ヨウ素価130以上、空気で固化、亜麻仁油)
硬化油(不飽和油脂にH2付加、マーガリン製造)

深掘り (原理・応用)

石鹸: 脂肪酸ナトリウム塩。親水基-COO-と疎水基(炭化水素鎖)が両端にある界面活性剤。水中でミセル(疎水基を内に向けた球状集合体)を形成し、油汚れを取り囲んで分散→洗浄。
硬水中ではCa2+, Mg2+と不溶塩(石鹸かす)を形成し効果低下。合成洗剤(LAS, AES等のスルホン酸ナトリウム)は硬水でも作用するが、生分解性・環境影響が課題。
トランス脂肪酸: マーガリン製造時の部分水素化でシス→トランスへの異性化が起き、健康に悪影響(心血管疾患リスク)。WHOは摂取制限を勧告、米国FDAは2018年に部分水素化油を食品添加物として認めない決定。
脂質代謝: 油脂はリパーゼで脂肪酸+モノアシルグリセロールに分解→吸収→β酸化(2炭素ずつアセチルCoAに分解)→クエン酸サイクル→ATP産生。1 g当たり9 kcalで糖質(4 kcal)より高エネルギー。

💡 ポイント
  • エステル化は可逆、酸触媒
  • けん化は不可逆、塩基性
  • 油脂=トリグリセリド(脂肪酸×3+グリセリン)
  • 飽和→固体「脂肪」、不飽和→液体「油」
  • ヨウ素価=不飽和度、けん化価=平均分子量逆比
  • 石鹸=脂肪酸Na塩、ミセルで洗浄
  • 硬化油=不飽和油脂のH2付加(マーガリン)

注意点 (混同しやすい・頻出ミス)

エステル化は可逆(水で平衡が戻る)、けん化は不可逆(石鹸が安定)。② エステル化の機構では酸のOHが脱離(同位体18O実験で確認)、アルコールのHが脱離してH2Oに。③ 石鹸の水溶液は弱塩基性(脂肪酸Na塩は加水分解)。④ 合成洗剤は中性〜弱酸性で硬水でも作用。⑤ 油脂1分子のけん化には3 molのNaOH/KOHが必要(3つのエステル結合のため)。

練習

  1. 酢酸とエタノールから酢酸エチルが生成する反応式を書け。
  2. 油脂(ステアリン酸×3+グリセリン)とNaOHのけん化反応式を書け。
  3. ヨウ素価が大きい油脂と小さい油脂の特徴を比較せよ。
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このレッスンのQ&A

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