糖類(炭水化物)
糖類は(CH2O)nの一般式を持ち、植物が光合成で作り出すエネルギー源・構造物質です。生命の主要構成成分の一つ。
基本知識
単糖類(monosaccharide): それ以上加水分解されない最小単位。
・グルコース C6H12O6(ブドウ糖): アルドヘキソース、α/β-D-グルコピラノース(六員環)、開環で-CHO構造を取りうるため還元性(銀鏡・フェーリング陽性)。
・フルクトース(果糖): ケトヘキソース、フラノース(五員環)が主、α-ヒドロキシケトン構造で還元性あり。
・ガラクトース: 乳糖の構成、グルコースのC4立体異性体。
二糖類(disaccharide): 単糖2分子の脱水縮合。
・マルトース(麦芽糖) グルコース×2、α-1,4結合、還元性あり、酵素マルターゼで加水分解。
・スクロース(ショ糖) グルコース+フルクトース、α-1,β-2結合、還元性なし(両端のヘミアセタールが結合に使われた)、酵素スクラーゼで加水分解→転化糖。
・ラクトース(乳糖) ガラクトース+グルコース、β-1,4結合、還元性あり、ラクターゼで加水分解。
多糖類(polysaccharide):
・デンプン: α-D-グルコース重合(α-1,4結合主、α-1,6分岐)、アミロース(直鎖、ヨウ素デンプン反応で青紫)+アミロペクチン(分岐、赤紫)。
・セルロース: β-D-グルコース重合(β-1,4結合)、植物細胞壁の主成分。
・グリコーゲン: 動物のエネルギー貯蔵、デンプンより高分岐。
単糖類(グルコース・フルクトース・ガラクトース等)
グリコシド結合(糖と糖を結ぶ-O-結合、酵素で加水分解)
還元糖(開環でCHO/α-ヒドロキシケトンを持つもの、フェーリング陽性)
スクロース(ショ糖)(還元性なし、両端ヘミアセタール塞ぐ結合)
α/β異性(環構造の1位-OHの立体、デンプンとセルロースの差)
アミロース/アミロペクチン(直鎖/分岐、ヨウ素デンプン反応の色違い)
深掘り (原理・応用)
セルロースとデンプンは構成単糖はどちらもグルコースですが、結合のα/β違いで全く異なる性質を示します。ヒトはα結合(デンプン)は消化できるがβ結合(セルロース)は消化できない(セルラーゼを持たないため)。一方、牛など草食動物は腸内細菌セルラーゼで消化可能。
セルロースの工業利用: パルプ・紙・綿(コットン)・再生繊維(レーヨン)(ビスコース法/銅アンモニア法)・セルロイド(ニトロセルロース)・アセテート繊維(ジアセテート/トリアセテート)。
糖の代謝: グルコース → 解糖系 → ピルビン酸 → アセチルCoA → クエン酸サイクル → ATP。1 molグルコースで最大38 mol ATPを得る。脳・赤血球は基本的にグルコースのみをエネルギー源とする。
糖尿病: インスリン作用不全で血中グルコースが過剰→腎臓で再吸収しきれずグルコース尿。糖尿病性ケトアシドーシス(脂肪代謝亢進でケトン体蓄積)、合併症として網膜症・腎症・神経障害。
光合成: 6CO2 + 6H2O → C6H12O6 + 6O2(クロロフィル・葉緑体・カルビン回路)。地球上のCO2固定の中核。
- 単糖類=グルコース/フルクトース等、二糖類=マルトース/スクロース等
- 多糖類=デンプン/セルロース/グリコーゲン
- グルコースは還元糖(開環でCHO)
- スクロースのみ還元性なし
- デンプンはα結合、セルロースはβ結合
- ヨウ素デンプン反応=アミロース青、アミロペクチン赤紫
- ヒトはβ-1,4結合を消化できない
注意点 (混同しやすい・頻出ミス)
① スクロースは還元性なし、それ以外の二糖は還元性あり。② デンプン/セルロースの違いはαかβかの1点。性質は劇的に違う。③ フルクトースの還元性: ケトンなのに還元性を示すのは、α-ヒドロキシケトン構造から塩基性溶液中でアルデヒドに異性化するから(エンジオール形成)。④ ガラクトースはグルコースのC4立体異性体(エピマー)、ラクトース構成糖。
練習
- スクロースが還元性を示さない構造的理由を述べよ。
- デンプンとセルロースは同じグルコース重合体だがヒトは前者しか消化できない、その理由を述べよ。
- ヨウ素デンプン反応の発色機構を簡潔に説明せよ。