高校発展 / DNA・遺伝情報の発現 2 / 6

転写: DNA→mRNA

転写: DNA→mRNA

転写(transcription)はDNAの遺伝情報をmRNA(メッセンジャーRNA)に写し取る過程です。DNAの塩基配列がRNAポリメラーゼによって相補的なmRNAへ変換されます。

基本知識

転写のしくみ(原核生物・大腸菌モデル): ①RNAポリメラーゼがプロモーター(特定塩基配列)に結合。②二本鎖DNAが局所的に解けて転写バブルが形成。③鋳型鎖(アンチセンス鎖)を3'→5'方向に読み、相補的なRNAを5'→3'方向に合成(UがTに対応)。④終結配列に達するとRNAポリメラーゼが解離し、一本鎖mRNAが完成。
真核生物の転写後プロセシング: ①5'キャップ(7-メチルグアノシン)付加=翻訳開始・核外輸送に必要。②3'ポリA鎖(Poly-A tail)付加=mRNAの安定性↑。③スプライシング=スプライソソームがイントロン(非コード配列)を除去しエクソン(コード配列)を連結。代替スプライシングにより1遺伝子から複数のタンパク質産生が可能。
RNAの種類: mRNA(タンパク質コード)・tRNA(翻訳時のアミノ酸運搬)・rRNA(リボソーム構成)・snRNA(スプライシング)・miRNA/siRNA(遺伝子発現抑制)・lncRNA(多様な調節機能)。
セントラルドグマ(クリック, 1958): DNA→(転写)→RNA→(翻訳)→タンパク質。逆転写(RNA→DNA)はレトロウイルスで起こる(逆転写酵素)。

例題
真核生物の代替スプライシングが生物の多様性に貢献する仕組みを説明しなさい。
解答: 代替スプライシングでは、同一の前駆体mRNA(pre-mRNA)から異なるエクソンの組み合わせを選択することで、1つの遺伝子が複数の異なるmRNA・タンパク質を産生できる。例えばヒトのDscam遺伝子は理論上数万種類のタンパク質を産生でき、これにより遺伝子数(約2万個)を大幅に超えるタンパク質の多様性が実現する。
ポイント
  • RNAポリメラーゼ=プロモーターに結合・mRNA合成
  • 鋳型鎖=アンチセンス鎖(3'→5'方向に読まれる)
  • 5'キャップ・ポリA鎖=真核生物のmRNA安定化
  • スプライシング=イントロン除去・エクソン連結
  • 代替スプライシング=1遺伝子→複数タンパク質
  • セントラルドグマ=DNA→RNA→タンパク質
  • 逆転写=RNA→DNA(レトロウイルスの逆転写酵素)

注意点

① 転写でUracil(U)はThymine(T)の代わりにAデノシンと対合する。② 原核生物には核膜がなく転写と翻訳が同時進行するが、真核生物では核内転写→核外へmRNA輸送→細胞質で翻訳という順序がある。③ エクソンはexon(expressed, 発現される)、イントロンはintron(intervening, 介在する)の略。

練習

  1. 鋳型DNAの塩基配列が5'-ATGCTA-3'のとき、転写されるmRNAの配列を5'→3'方向で答えなさい。
  2. 真核生物でmRNA前駆体に対して行われる3種類の転写後プロセシングを答えなさい。
  3. セントラルドグマの例外である逆転写酵素をもつウイルスの例を挙げなさい。

このレッスンのQ&A

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