屈性と傾性
植物は外部刺激に方向を持って応答する屈性と、刺激の方向に関係なく応答する傾性によって環境に適応します。
基本知識
屈性(tropism): 刺激の方向に依存した成長反応。
①屈光性(光屈性): 茎は光に向かう(正の屈光性)、根は光を避ける傾向(負の屈光性)。オーキシンの横方向の再分布が原因。
②屈重力性(重力屈性): 茎は重力に逆らって上向きに成長(負の屈重力性)、根は重力方向に成長(正の屈重力性)。根冠のスタトリスト細胞のアミロプラスト(でんぷん粒)が重力センサーとなる。オーキシンとABAの不均等分布が関与。
③屈触性(接触屈性・チグモトロピズム): つる植物の巻きひげが接触した物に巻き付く現象。接触面の反対側細胞が伸長する。
④屈水性: 根が水の方向へ伸びる。
⑤屈化性: 根が化学物質の方向へ伸びる(または避ける)。
傾性(nasty movement): 刺激の方向に関係なく起こる運動。
①光傾性: タンポポの花が昼間開き夜間閉じる(細胞の膨圧変化)。
②感震傾性(触傾性): オジギソウ(ミモザ)が触れると葉を閉じる(葉枕細胞の急速な水放出→膨圧低下)。
③温度傾性: チューリップが温度上昇で開く。
オーキシンの極性輸送: PIN(ピン様)輸送体が極性を持って細胞膜に分布し、オーキシンを一方向(先端→基部)に輸送する。極性輸送が屈性の方向性の基礎。
例題
植物の茎が正の屈重力性を示さず負の屈重力性を示す(上向きに成長する)のはなぜか、オーキシンの不均等分布と細胞の感受性から説明しなさい。
解答: 横に倒した茎では重力によりオーキシンが下側に多く集まる。茎の細胞はオーキシンの適正濃度範囲が広く、下側の高濃度オーキシンで伸長が促進される。上側は低濃度のため伸長が少なく、下側>上側の伸長差によって茎は上向き(重力方向とは逆)に曲がる。
植物の茎が正の屈重力性を示さず負の屈重力性を示す(上向きに成長する)のはなぜか、オーキシンの不均等分布と細胞の感受性から説明しなさい。
解答: 横に倒した茎では重力によりオーキシンが下側に多く集まる。茎の細胞はオーキシンの適正濃度範囲が広く、下側の高濃度オーキシンで伸長が促進される。上側は低濃度のため伸長が少なく、下側>上側の伸長差によって茎は上向き(重力方向とは逆)に曲がる。
ポイント
- 屈光性=オーキシン横分布→陰側の伸長↑→光方向へ曲がる
- 屈重力性=茎は上(負)・根は下(正)
- 根冠スタトリスト=アミロプラストが重力センサー
- 屈触性=つる植物のつかみつき
- 傾性=刺激方向に無関係(光傾性・感震傾性)
- オジギソウ=葉枕の膨圧低下で葉閉じる
- PIN輸送体=オーキシンの極性輸送を担う
注意点
① 屈性は成長による不可逆的な変化だが、傾性は可逆的な膨圧変化による運動が多い。② 根のオーキシン感受性は茎より高いため、茎では促進的な濃度でも根では抑制的になりうる。③ オジギソウの感震傾性は活動電位の伝播と葉枕の膨圧変化によるもので、動物の神経伝達とは異なる。
練習
- 屈性と傾性の定義の違いを答えなさい。
- 植物の根が正の屈重力性を示す際に重力を感知する部位と感知に使われる細胞小器官を答えなさい。
- オジギソウが触れると葉が閉じる現象のしくみを、葉枕・膨圧・水の移動の観点から説明しなさい。