抗体とB細胞の働き
抗体(免疫グロブリン, Ig)はB細胞が産生するY字型のタンパク質で、病原体の特定の抗原決定基(エピトープ)に精密に結合します。抗体の構造・クラス・作用機序を理解することは、ワクチン設計や免疫療法の基礎となります。
基本知識
抗体の構造: 2本の重鎖(H鎖)と2本の軽鎖(L鎖)がジスルフィド結合で連結したY字型の4量体。先端の可変領域(V領域)が抗原と結合し(Fab領域)、基部の定常領域(Fc領域)がエフェクター機能を担う。
抗体クラス(アイソタイプ): IgM=初期免疫応答・五量体・補体活性化。IgG=主要血清抗体・二次応答・胎盤通過可能。IgA=粘膜面・母乳に多い・二量体。IgE=アレルギー・寄生虫感染に関与・肥満細胞を感作。IgD=B細胞受容体。
抗体の作用機序: ①中和=病原体の表面を抗体でマスクし受容体結合や毒素を無力化する。②オプソニン化=抗体でコーティングされた病原体はFc受容体をもつマクロファージ・好中球に貪食されやすくなる。③補体活性化=IgM・IgGが補体カスケードを開始し、病原体の膜を溶解(MAC形成)。
クローン選択説: 多様な抗原受容体をもつB細胞が予め存在し、特定の抗原が対応するクローンを選択・増殖させる。これがB細胞の多様性の基礎。体細胞超変異とクラスシフト(アイソタイプスイッチング)により応答の精度とクラスが変化する。
IgGとIgMの違いを、構造・産生時期・機能の3点で比較しなさい。
解答: ①構造: IgGは単量体(4量体)、IgMは五量体で分子量が大きい。②産生時期: IgMは感染初期(一次応答)に先に産生され、IgGはその後クラスシフトで産生され二次応答でも主役となる。③機能: IgMは補体活性化が強力。IgGは胎盤を通過して胎児に受動免疫を与えることができ、オプソニン化・補体活性化など多機能を担う。
- 抗体=重鎖2本+軽鎖2本のY字型4量体
- Fab領域=抗原結合部位(可変領域)
- Fc領域=エフェクター機能(補体・食細胞との相互作用)
- IgM=初期応答・五量体・補体活性化
- IgG=主要血清・二次応答・胎盤通過
- IgE=アレルギー・肥満細胞を感作
- 抗体の作用=中和・オプソニン化・補体活性化
注意点
① 抗体の多様性はV(D)J組換えによりB細胞分化過程で遺伝子レベルで生み出される。② IgEが肥満細胞に結合し、同じ抗原に再曝露されるとヒスタミン放出→アレルギー反応が起こる。③ モノクローナル抗体は1種類の抗原エピトープを標的にする単一クローンの抗体で、診断・治療薬として広く使用される。
練習
- 抗体の構造をFab領域・Fc領域・重鎖・軽鎖の語を使って説明しなさい。
- オプソニン化とはどのような現象か、食作用との関係を含めて説明しなさい。
- IgEが関与する免疫応答を答え、それがアレルギーを引き起こすメカニズムを述べなさい。