T細胞と細胞性免疫
T細胞(T リンパ球)は細胞性免疫の主役であり、ウイルス感染細胞やがん細胞、移植組織などを直接排除します。T細胞は胸腺で厳しい選択を経て成熟し、自己MHCを識別しつつ自己組織を攻撃しないよう教育されます。
基本知識
胸腺での成熟と選択: T細胞前駆細胞は骨髄から胸腺へ移行し、陽性選択(自己MHCを認識できるT細胞を生き残らせる)と陰性選択(自己抗原と強く反応するT細胞を排除=クローン除去)という二段階の選択を受ける。これにより中枢性免疫寛容が成立する。
T細胞のサブセット: ヘルパーT細胞(CD4⁺): APC上のMHCクラスII分子を認識。活性化後、インターロイキン(IL-2, IL-4, IFN-γなど)を産生してB細胞・Tc細胞を助ける。Th1(細胞性免疫促進)・Th2(体液性免疫促進)・Th17(炎症)などのサブセットに分化。細胞傷害性T細胞(CD8⁺/CTL): APC上のMHCクラスI分子を認識。感染細胞に接触してパーフォリン・グランザイムを放出しアポトーシスを誘導。制御性T細胞(Treg/CD4⁺CD25⁺): 免疫応答を抑制し自己免疫を防止する。
細胞性免疫の流れ: ①樹状細胞が抗原提示→②ヘルパーT細胞活性化(IL-2産生・増殖)→③CTL・Th1が増殖→④CTLがウイルス感染細胞に接触→⑤パーフォリン/グランザイムでアポトーシス誘導→⑥記憶T細胞形成。
細胞傷害性T細胞がウイルス感染細胞を識別する仕組みを、MHCクラスI分子とパーフォリンの役割を含めて説明しなさい。
解答: ウイルスに感染した細胞はウイルスタンパク質断片(抗原ペプチド)をMHCクラスI分子上に提示する。CTL(CD8⁺T細胞)はT細胞受容体でこの複合体を認識し、感染細胞に密着してパーフォリンを放出する。パーフォリンは感染細胞膜に孔を開け、続いてグランザイムが侵入して感染細胞のアポトーシス(プログラム細胞死)を誘導することで感染細胞を排除する。
- 陽性選択=自己MHC認識できるT細胞を生存させる
- 陰性選択=自己抗原と強く反応するT細胞を排除
- CD4⁺ヘルパーT細胞=MHCクラスIIを認識・司令塔
- CD8⁺ CTL=MHCクラスIを認識・感染細胞を殺す
- パーフォリン=膜に孔・グランザイム=アポトーシス誘導
- Treg=免疫応答を抑制・自己免疫疾患を防止
- IL-2=T細胞の増殖を促すインターロイキン
注意点
① CTLは細胞を「殺す」のではなく、アポトーシス(プログラム細胞死)を「誘導する」。② HIV はCD4⁺T細胞(ヘルパーT細胞)に感染・破壊するため、体液性免疫と細胞性免疫の両方が機能不全となる。③ がん免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬)はCTLのブレーキを外してがん細胞への攻撃を増強する戦略。
練習
- 胸腺での陽性選択と陰性選択の意義をそれぞれ説明しなさい。
- CD4⁺T細胞とCD8⁺T細胞はそれぞれどのMHCクラスの分子を認識するか。
- パーフォリンとグランザイムが協力して感染細胞を排除するしくみを説明しなさい。