高校発展 / 動物の行動 3 / 6

本能と知能

本能と知能

動物の行動は単純な反射から、ゴリラやチンパンジーに見られる高度な問題解決まで連続的なスペクトルをなします。知能(認知)とは、過去の経験を一般化して新しい問題に適用する能力であり、いかなる動物にどの程度の知能があるかは比較認知科学の中心的テーマです。

基本知識

洞察学習(Insight Learning): ケーラーがチンパンジーで発見。試行錯誤なしに問題の構造を「理解」して突然解決策が生まれる。例: 天井の餌を取るために木箱を積み重ねる。新しい状況への即座の転移が起こる点が試行錯誤学習と異なる。

道具使用・道具製作: チンパンジーは草の茎を改造してシロアリを釣る・石を使ってナッツを割る。カレドニアカラスは鈎形のワイヤーを自作して餌を取り出す。道具製作はより高次の認知を示す。

模倣(社会的学習): 他個体の行動を観察して同じ行動を習得する。チンパンジーの群れで新しい採食法が伝播する=文化の初歩的形態とみなされる。

言語的コミュニケーションと類人猿研究: チンパンジー・ゴリラは手話・象徴記号を習得できることが示されたが、文法的に複雑な構文を自発的に生成する能力はヒトに固有とされる。

動物の自己認識: チンパンジー・ゾウ・イルカ・カラスはミラーテスト(鏡で自己認識する)を通過し、他者の心の状態を推測する心の理論(Theory of Mind)の要素をもつ可能性が示されている。

例題
洞察学習を試行錯誤学習と比較し、チンパンジーの箱積み実験を例に説明しなさい。
解答: 試行錯誤学習は偶然の成功と強化によってゆっくり学習が成立する。一方、洞察学習では突然「ひらめき」が生じて問題が解決される。ケーラーの実験では、チンパンジーが天井から吊るされた餌を取るために室内の木箱を積み重ねるという解決策を、試行錯誤なしに突然実行した。解決策は新しい状況に即座に転移でき、ひとたび習得すると忘れない点が特徴である。
ポイント
  • 洞察学習=突然の問題解決・試行錯誤なし・ケーラー
  • 道具製作=チンパンジー・カレドニアカラスが実証
  • 社会的学習(模倣)=他個体の行動を観察して習得
  • 文化=社会的学習によって群れ内に伝播する行動パターン
  • 心の理論=他者の意図・信念を推測する能力
  • ミラーテスト=自己認識能力の検証法
  • 認知は単純な反射から複雑な問題解決まで連続的

注意点

① 洞察学習はすべての動物で起こるわけではなく、高次の認知能力をもつ種に限られる。② 動物の「知能」を人間の尺度で測ることには注意が必要で、各種の生態的文脈での適応能力を評価することが重要。③ 社会的学習と真の洞察学習を区別する実験デザインが必要。

練習

  1. 洞察学習と試行錯誤学習の違いを述べ、それぞれどの動物で代表的に研究されたかを答えなさい。
  2. 動物における「文化」とはどのような現象を指すか、チンパンジーの例を挙げて説明しなさい。
  3. ミラーテストが自己認識の指標となる理由を述べ、このテストをパスする動物を3種挙げなさい。
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このレッスンのQ&A

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