古気候の復元方法 (酸素同位体比・年輪・氷床コア)
過去の気候は直接観測できませんが、様々な自然のアーカイブ(代替指標=プロキシ)を分析することで復元できます。酸素同位体比・年輪・氷床コアが代表的な手法です。
基本知識
酸素同位体比(δ¹⁸O)は古気候復元の最重要指標の一つです。自然界には¹⁶O と¹⁸O の2種の安定同位体があり、軽い¹⁶O は蒸発しやすく、重い¹⁸O は凝縮(降水)しやすい性質があります。氷河期(寒冷期)には¹⁶O の多い水が優先的に氷河に取り込まれるため、海水の¹⁸O 比率が高まります(海洋のδ¹⁸O 上昇)。有孔虫の殻のδ¹⁸O を測定することで過去の海水温と氷河量を推定できます。
年輪(樹木年輪)は温暖・湿潤な時期に幅広く、寒冷・乾燥期に幅狭くなります。長寿な樹木や化石木を積み重ねることで数千年の気候変動を年単位で復元できます。年輪年代学(デンドロクロノロジー)は考古学の年代決定にも使われます。
氷床コアはグリーンランドや南極の氷を掘削して得られる試料です。氷に閉じ込められた気泡から過去の大気組成(CO₂・CH₄濃度)を直接測定でき、氷の酸素同位体比から気温変化も復元できます。南極のドームCコア(EPICA)は約80万年前までの気候・温室効果ガス記録を提供しています。
例題
氷河期に海洋堆積物中の有孔虫殻のδ¹⁸O が高くなる理由を説明しなさい。
解答: 水の蒸発では軽い¹⁶O が優先的に蒸発し、寒冷期には蒸発した水(¹⁶O 富む)が陸上氷河として蓄積され海に戻りにくくなる。その結果、海水中の¹⁸O の割合が相対的に高まり、海水から殻を形成する有孔虫の殻のδ¹⁸O も上昇する。
氷河期に海洋堆積物中の有孔虫殻のδ¹⁸O が高くなる理由を説明しなさい。
解答: 水の蒸発では軽い¹⁶O が優先的に蒸発し、寒冷期には蒸発した水(¹⁶O 富む)が陸上氷河として蓄積され海に戻りにくくなる。その結果、海水中の¹⁸O の割合が相対的に高まり、海水から殻を形成する有孔虫の殻のδ¹⁸O も上昇する。
ポイント
- δ¹⁸O:¹⁸O/¹⁶O 比の標準値からのずれ
- 氷河期→海洋のδ¹⁸O 上昇(¹⁶O が氷河に取られる)
- 有孔虫殻のδ¹⁸O から過去の海水温・氷河量を推定
- 年輪:温暖・湿潤=幅広、寒冷・乾燥=幅狭
- 氷床コア:気泡→過去のCO₂・CH₄濃度を直接測定
- 南極ドームCコア:約80万年前まで記録
- 複数プロキシを組み合わせて高精度復元
注意点
① δ¹⁸O は「温度」だけでなく「氷河量(海水量)」の変化も反映するため両者を区別して解釈する必要がある。② 年輪は年ごとの高時間分解能を持つが、樹木が生育できる時代・地域に限られる。③ 氷床コアの気泡は氷の閉鎖時点(通常は堆積から数十年後)の大気を反映するため、わずかな時間的ラグがある。
練習
- 有孔虫殻のδ¹⁸O が氷河期に上昇する理由を述べなさい。
- 氷床コアの気泡から何を直接測定できるか。
- 年輪が幅広くなる気候条件を答えなさい。