民主政治の基本原理
民主政治は、「人民による統治」を理念とする政治形態です。その思想的基盤は近代ヨーロッパに生まれた社会契約説にあります。なぜ国家が存在するのか、その正当性はどこにあるのかを考えてみましょう。
基本知識
社会契約説とは、国家や政府の権力は人民の合意(契約)によって成り立つという考え方です。ホッブズは著書『リヴァイアサン』で、自然状態を「万人の万人に対する闘争」と捉え、安全のために人民が君主に権力を全面委託すると論じました。ロックは『統治二論』で、人民は生命・自由・財産という自然権を守るために契約を結び、政府がこれを侵害するときは抵抗権(革命権)を行使できると主張しました。ルソーは『社会契約論』で人民主権と一般意志を唱え、フランス革命に大きな影響を与えました。また、法の支配とは権力者も法に拘束されるという原則で、人の支配(独裁)と対置されます。イギリスのマグナ・カルタ(1215年)はその先駆けです。
社会契約説(国家権力の正当性は人民の合意に基づくとする理論)
自然権(生まれながらにして持つ権利。生命・自由・財産など)
抵抗権(政府が自然権を侵害したとき、人民が抵抗できる権利。ロックが主張)
人民主権(国家の最終的な権力は人民にあるとする原則)
法の支配(権力者も含め誰もが法に従わなければならないという原則)
一般意志(ルソーが説いた、社会全体の共通利益を目指す意志)
深掘り (背景・意義)
社会契約説が生まれた17〜18世紀のヨーロッパは、絶対王政が支配する時代でした。国王は「神から権力を授かった」とする王権神授説を根拠に絶対的権力を行使していました。ロックの思想はアメリカ独立宣言(1776年)に、ルソーの思想はフランス革命(1789年)に直接影響を与えています。現代の民主主義国家は、これらの思想を礎に、選挙・議会・憲法といった制度を整備しています。日本国憲法も前文で「主権が国民に存すること」を明記しており、社会契約説の精神を受け継いでいます。
- ホッブズ→強力な主権者による秩序(自然状態=闘争)
- ロック→抵抗権・議会主義(自然権保護のための契約)
- ルソー→直接民主主義・人民主権(一般意志)
- 「法の支配」は権力者も法に従う原則(「法治主義」とは区別される)
- マグナ・カルタ(1215年)→権利の請願(1628年)→権利章典(1689年)と発展
- 社会契約説はアメリカ独立宣言・フランス人権宣言に影響
- 現代民主主義の三原則:国民主権・基本的人権の尊重・平和主義
注意点 (混同しやすい)
① ホッブズとロックの違い:ホッブズは強力な主権者への権力集中を主張したが、ロックは権力の制限と抵抗権を認めた。② 法の支配と法治主義の違い:法の支配は権力も法に拘束される実質的原則、法治主義は形式的に法に従えばよいという考え方で別概念。③ 一般意志と多数決は同じではない:ルソーによれば、一般意志は社会全体の利益を指し、個人意志の集合(全体意志)とは異なる。④ 抵抗権は現代の日本国憲法には明文規定がないが、思想としては基本的人権に根拠が認められる。
練習
- ロックが主張した「抵抗権」とはどのような権利ですか。自然権という言葉を使って説明してください。
- 「法の支配」とはどういう意味ですか。「人の支配」との違いを明らかにして答えてください。
- ホッブズ・ロック・ルソーの社会契約説を比較し、それぞれの自然状態観と政治理論の特徴を述べてください。