国際政治と平和
国際社会での平和維持は、歴史的に大きな試練を経ながら発展してきました。二度の世界大戦の反省から生まれた国際連合は、今日も平和の維持に重要な役割を担っています。日本が掲げる平和主義も、この文脈のなかで理解することが大切です。
基本知識
国際政治における平和維持の考え方には、大きく二つの枠組みがあります。勢力均衡(バランス・オブ・パワー)は、諸国家が同盟などを通じて力のバランスを保つことで戦争を抑止しようとする考え方です。一方、集団安全保障は、国家群が「侵略を行った国家に対しては集団で制裁を加える」と合意することで平和を維持する仕組みです。国際連合(国連)はこの集団安全保障を基盤としています。
国連の主要機関のうち、国際の平和と安全の維持に主要な責任を持つのは安全保障理事会(安保理)です。安保理は米・英・仏・露・中の常任理事国5か国(P5)と非常任理事国10か国で構成され、常任理事国には拒否権が認められています。これにより大国間の利害が対立すると安保理が機能不全に陥る「大国拒否権の壁」が生じます。
軍縮の面では、核不拡散条約(NPT)・包括的核実験禁止条約(CTBT)・核兵器禁止条約(TPNW)などが存在します。日本は非核三原則(核を「持たず・作らず・持ち込ませず」)を国是とし、唯一の戦争被爆国として核廃絶を訴えています。
集団安全保障(加盟国全体で侵略国に制裁を加える平和維持の枠組み)
安全保障理事会(国連の主要機関。国際平和・安全の維持に責任を持つ)
拒否権(常任理事国5か国が持つ実質的決定を阻止できる権限)
PKO(国連平和維持活動)(国連が派遣する平和維持部隊による停戦監視等)
非核三原則(日本の国是:核を持たず・作らず・持ち込ませず)
核不拡散条約(NPT)(核保有国の増加を防ぐことを目的とした条約)
深掘り (背景・意義)
第一次世界大戦後に設立された国際連盟は全会一致制を採用し、主要国(米国・ソ連・日独)が参加しないという構造的欠陥を持っていました。この反省から1945年に設立された国際連合は多数決制と安保理による大国協調を採用しました。しかし冷戦期には米ソが拒否権を乱用し、安保理は事実上麻痺していました。冷戦終結後はPKO活動が急増し、国連の機能が回復しましたが、2022年のロシアによるウクライナ侵攻では再び拒否権の問題が浮上しています。
日本の平和主義は憲法第9条に明記されており、戦争放棄・戦力不保持・交戦権の否認を定めています。非核三原則は佐藤栄作首相が提唱し、核廃絶外交の基盤となっています。
- 集団安全保障:「侵略国に対し国家群が集団で制裁」という仕組み
- 安保理常任理事国(P5):米・英・仏・露・中の5か国
- 拒否権:P5のうち1か国でも反対すると実質決議不成立
- PKOは国連の要請で各国が軍・文民要員を派遣する
- 非核三原則は「持たず・作らず・持ち込ませず」の3つ
- NPTは核保有を認める国をP5に限定し、核拡散を防ぐ条約
- 核兵器禁止条約(TPNW)には日本は署名していない
注意点 (混同しやすい)
① 国際連盟と国際連合の違い:連盟は全会一致制・米国不参加、連合は多数決制・安保理制度。② 集団安全保障と集団的自衛権の違い:前者は国連枠組み内の制裁、後者は同盟国への武力攻撃に共同で対処する権利。③ NPTは核拡散防止、TPNWは核兵器の全面禁止を目指す、目的の異なる条約である。④ 非核三原則は法律ではなく「国是(政策方針)」であることに注意。
練習
- 集団安全保障とはどのような仕組みか、勢力均衡との違いを踏まえて説明しなさい。
- 安全保障理事会の拒否権がもたらす問題点を具体的に述べなさい。
- 日本の非核三原則の内容を述べ、その意義を説明しなさい。