国際経済のしくみ
国家間の貿易は、各国が互いに得意なものを生産し交換することで、双方の生活を豊かにします。その理論的根拠から、現代の貿易制度・通貨制度まで、国際経済の基本的な仕組みを学びましょう。
基本知識
貿易の理論的根拠として、イギリスの経済学者リカードが唱えた比較生産費説(比較優位の原理)があります。これは「各国が相対的に低いコストで生産できる財に特化して貿易を行えば、双方が利益を得られる」という考え方です。絶対的な生産効率が劣る国でも、比較優位を持つ財に特化することで貿易の利益が生まれます。
貿易には自由貿易(関税・輸入制限を撤廃し自由な取引を促進)と保護貿易(国内産業保護のため関税や輸入制限を設ける)の立場があります。戦後の多角的自由貿易体制はGATT(関税と貿易に関する一般協定)が支え、1995年にWTO(世界貿易機関)へ発展しました。WTOは①最恵国待遇、②内国民待遇、③紛争解決手続きを基本原則とします。近年は二国間・地域間のFTA(自由貿易協定)や、貿易以外の投資・知的財産も含むEPA(経済連携協定)が増加しています。
通貨の面では、二国間の通貨交換比率を為替相場(為替レート)といいます。円の価値が上がることを円高(例:1ドル=100円→80円)、下がることを円安(例:1ドル=100円→130円)といいます。
比較生産費説(比較優位)(リカードが唱えた、相対的優位な財に特化することで互恵的貿易が成立するという理論)
WTO(世界貿易機関)(自由貿易促進・紛争解決を担う国際機関。1995年設立)
FTA(自由貿易協定)(二国間・地域間で関税撤廃等を取り決める協定)
EPA(経済連携協定)(FTAに加え投資・知的財産等も含む包括的な協定)
円高(円の価値が上昇。輸出企業には不利、輸入・旅行には有利)
保護貿易(関税や輸入制限で国内産業を保護する政策)
深掘り (背景・意義)
第二次世界大戦の一因に、各国が自国優先の保護貿易・ブロック経済化を進めたことが挙げられます。戦後、アメリカ主導でブレトン・ウッズ体制(固定為替相場制・IMF・世界銀行)が構築され、GATT(後のWTO)が多角的自由貿易を推進しました。しかし1973年のニクソン・ショック以降、主要国は変動相場制に移行しています。
近年、WTOでの多国間交渉(ドーハ・ラウンド)が停滞するなか、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)やRCEP(地域的な包括的経済連携)などの広域経済連携が台頭しています。自由貿易は経済全体を豊かにする一方、特定産業や労働者が打撃を受けるという格差問題も引き起こします。保護貿易と自由貿易のバランスは、現代でも政策論争の焦点です。
- 比較優位の原理:絶対劣位でも比較優位な財があれば貿易の利益が生まれる
- WTOは1995年にGATTを発展させて設立された
- 円高→輸出不利・輸入有利。円安→輸出有利・輸入不利
- FTAは関税撤廃中心。EPAはより広範な経済協力を含む
- WTOの基本原則:最恵国待遇と内国民待遇
- 変動相場制:需給によって為替レートが日々変動する制度
注意点 (混同しやすい)
① 絶対優位と比較優位の違い:絶対優位はある財の生産コストが絶対的に低いこと、比較優位はある財の機会費用が相対的に低いこと。② 円高と円安:数字が小さくなる(1ドル=○○円の円の数字が減る)のが円高、増えるのが円安。③ FTAとEPA:EPAはFTAを包含するより広い概念。④ GATTは条約(協定)、WTOは国際機関であり、区別が必要。
練習
- リカードの比較生産費説の内容を、具体例を挙げながら説明しなさい。
- 円高が日本の輸出企業と輸入企業それぞれに与える影響を述べなさい。
- WTOとFTA・EPAの関係および相違点を説明しなさい。