メンデル遺伝の応用と現代の遺伝学
メンデルの法則を使えば、子や孫に現れる形質の比を計算で予測できます。さらに現代の遺伝学は、DNA技術によって医療や農業を大きく変えました。
基本知識
パネット方陣(掛け算表)を使うと遺伝の組み合わせが整理できます。
例1: Aa × Aa(F₁どうし)
父の生殖細胞は A:a = 1:1、母の生殖細胞も A:a = 1:1
表:
A a
A AA Aa
a Aa aa
→ AA:Aa:aa = 1:2:1(遺伝子型)、丸:しわ = 3:1(表現型)
例2: Aa × aa(検定交雑)
A a
a Aa aa
→ Aa:aa = 1:1、丸:しわ = 1:1
これを使えば、両親の遺伝子型がわかれば子に現れる形質の比率を計算できます。
現代の遺伝学:
・DNA鑑定: 親子鑑定や事件の証拠に使う(警察・法医学)。
・遺伝子組換え: 病気に強い作物・インスリン生産。
・ヒトゲノム計画: ヒトのDNAをすべて解読(2003年完了)。
・遺伝子治療: 病気の原因の遺伝子を修正する治療法。
・iPS細胞(山中伸弥): 体細胞を初期化して様々な細胞に分化させる技術。
表現型(実際に現れる形質。丸・しわ・紫・白など)
遺伝子型(遺伝子の組合せ。AA・Aa・aa)
検定交雑(潜性ホモ(aa)とかけ合わせて遺伝子型を調べる方法)
DNA鑑定(DNAの違いから個人を識別する技術)
遺伝子組換え(生物のDNAに別の遺伝子を組み込む技術)
iPS細胞(人工多能性幹細胞。山中伸弥が2006年に作製)
深掘り (背景・意義)
ヒトの遺伝の例:
・耳あか: 湿った耳あか(顕性) vs 乾いた耳あか(潜性)
・巻き舌: できる(顕性) vs できない(潜性)
・えくぼ: できる(顕性) vs できない(潜性)
これらはメンデル型の単純な遺伝で説明できます。一方、身長や肌の色は多数の遺伝子+環境が複雑に絡む(多因子遺伝)ため、単純な3:1にはなりません。
血液型: ABO式血液型はA・B・Oの3種類の対立遺伝子。AとBは互いに顕性(共顕性)、Oは潜性。組合せでA・B・AB・O型が決まります。
遺伝子組換え技術はGM作物(遺伝子組換え作物)として除草剤耐性のダイズ、害虫抵抗性のトウモロコシなどに利用される一方、安全性や生態系への影響をめぐる議論も続いています。
iPS細胞は2012年に山中伸弥がノーベル生理学・医学賞を受賞した日本発の技術で、再生医療(目・心臓・神経の治療)への応用が進んでいます。
メンデルの単純な3:1という発見が、150年後の現代医療や食料生産にまでつながっていることに、生物学の奥深さがあります。
- パネット方陣で遺伝の組合せを計算
- Aa × Aa → 1:2:1(遺伝子型)、3:1(表現型)
- Aa × aa(検定交雑)→ 1:1
- 表現型=見た目、遺伝子型=遺伝子の組合せ
- ABO式血液型は3つの対立遺伝子、AとBは共顕性
- DNA鑑定・遺伝子組換え・ゲノム解析
- iPS細胞=山中伸弥(2006)、ノーベル賞(2012)
- 身長・肌色は多因子遺伝で3:1にならない
注意点 (混同しやすい)
① 遺伝子型(AA・Aa・aa)と表現型(丸・しわ)を区別。② 3:1は表現型の比、1:2:1は遺伝子型の比。③ 検定交雑(Aa or AAをaaで調べる)で1:1なら相手はAa、すべて顕性ならAA。④ iPS細胞(2006年山中伸弥)とES細胞(受精卵由来)は別物。
練習
- Aa(丸)とaa(しわ)をかけ合わせると、子の代の表現型の比はどうなるか。
- 遺伝子型1:2:1のとき、表現型の比はどうなるか。理由とともに答えなさい。
- iPS細胞を作製した日本人科学者の名前を答えなさい。