高校発展 / 無機化学(遷移元素・錯体) 5 / 6

金属イオンの定性分析(系統分析)

金属イオンの定性分析(系統分析)

未知試料中の金属イオンを順次沈殿させて同定する系統分析は、無機化学の総合演習であり入試頻出です。

基本知識

標準的な高校レベルの系統分析の流れ(混合溶液中の代表的金属イオン):
希HClを加える → 第1属(Ag+, Pb2+) がAgCl, PbCl2として白沈殿。PbCl2は熱湯で溶ける、AgCl(白)はNH3水で錯体化して溶ける。
酸性下でH2S第2属(Cu2+, Cd2+, Pb2+, Hg2+等) がCuS(黒)、CdS(黄)、PbS(黒)などとして沈殿。
NH3水/塩化アンモニウム緩衝液第3属(Fe3+, Al3+, Cr3+) がFe(OH)3(赤褐)、Al(OH)3(白)、Cr(OH)3(灰緑)で沈殿。
塩基性下でH2S第4属(Zn2+, Mn2+, Ni2+, Co2+等) がZnS(白)、MnS(淡桃)、NiS(黒)、CoS(黒)。
(NH4)2CO3第5属(Ca2+, Sr2+, Ba2+) がCaCO3などで沈殿。
残り(第6属): Na+, K+, Mg2+, NH4+炎色反応等で識別。

📘 沈殿色一覧
白沈殿(AgCl, PbCl2, BaSO4, Al(OH)3, Zn(OH)2, ZnS, CaCO3
黒沈殿(CuS, PbS, HgS, FeS, Ag2S)
黄沈殿(CdS, AgI, PbI2, K2CrO4系)
赤褐沈殿(Fe(OH)3, Fe2O3·nH2O)
青沈殿(Cu(OH)2淡青、ターンブル青/プルシアン青)
緑沈殿(Cr(OH)3, Ni(OH)2

深掘り (原理・応用)

系統分析の原理は溶解度積Kspの差pH・配位子による選択的溶解です。酸性H2SではS2-濃度が低く、Kspの小さい(=溶けにくい)金属硫化物だけが沈殿します(第2属)。塩基性ではS2-濃度が高くなり、より溶けやすいZnS, MnS等も沈殿(第4属)。
現代の分析化学ではこの系統分析はICP発光分析原子吸光分析ICP-MSに置き換えられ、ppt(10-12)レベルまで定量可能ですが、原理理解として系統分析は今も教育的価値が高い。
実務では水質検査土壌汚染調査鉱石分析金属リサイクルでの前処理として、これらの沈殿反応・錯形成の知識は今も不可欠です。

💡 ポイント
  • 第1属=AgCl, PbCl2(希HClで沈殿)
  • 第2属=CuS, CdS, PbS, HgS(酸性H2S)
  • 第3属=Fe(OH)3, Al(OH)3, Cr(OH)3(NH3水)
  • 第4属=ZnS, MnS, NiS, CoS(塩基性H2S)
  • 第5属=CaCO3等(炭酸アンモニウム)
  • 第6属=Na+, K+等(炎色反応)
  • 原理=KspとpH/配位子による選択性

注意点 (混同しやすい・頻出ミス)

Pb2+は第1属と第2属両方に出る(PbCl2は冷水でやや溶けるため取りこぼし、第2属でPbSとして沈殿)。② Al(OH)3とZn(OH)2は両性で、過剰NaOHで溶ける→第3属の操作はNaOHでなくNH3を使う。③ NH4+は炎色反応がないので、ネスラー試薬等で別途検出。④ Cuイオンの過剰NH3水での挙動: 最初Cu(OH)2淡青沈殿→過剰で[Cu(NH3)4]2+深青色。

練習

  1. Ag+, Cu2+, Fe3+, Zn2+, Ba2+を含む混合溶液から、系統分析で各イオンを分離する手順を書け。
  2. Al(OH)3とZn(OH)2は両者とも白色沈殿だが、これらを区別する方法を述べよ。
  3. 系統分析でNH3水ではなくNaOHを使うと不都合な理由を説明せよ。
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