亜鉛・水銀・クロム・マンガン
その他の重要な遷移系金属を取り上げます。亜鉛は両性、水銀は唯一の液体金属、クロムとマンガンは酸化還元滴定の主役です。
基本知識
亜鉛 Zn(12族、典型元素的): 両性金属。 Zn + 2HCl → ZnCl2 + H2、 Zn + 2NaOH + 2H2O → Na2[Zn(OH)4] + H2。トタン(Znめっき鋼板)・乾電池・黄銅(真鍮)に使用。
水銀 Hg: 常温で液体の唯一の金属。Hg(I)はHg22+(二量体イオン)、Hg(II)はHg2+。アマルガム(Hg合金)は歯科修復に伝統的に使用されたが、有機水銀(メチル水銀)は水俣病の原因。現在は使用厳重制限。
クロム Cr: 酸化数+2/+3/+6。Cr2O3緑色顔料、Cr(VI)は強酸化剤・発がん性。クロム酸塩K2CrO4(黄)と二クロム酸塩K2Cr2O7(橙)はpHで相互変換。
マンガン Mn: 酸化数+2〜+7。過マンガン酸カリウムKMnO4は赤紫色の強酸化剤。酸性条件で MnO4- + 8H+ + 5e- → Mn2+ + 4H2O(無色)。中性〜塩基性ではMnO2(褐色)止まり。
両性金属(再掲)(Al, Zn, Sn, Pb=「あぁすんなり」)
アマルガム(Hg合金、歯科・金鉱抽出に歴史的使用)
過マンガン酸カリウムKMnO4(赤紫、酸化還元滴定の試薬)
二クロム酸カリウムK2Cr2O7(橙、酸化剤)
クロムめっき(防食・装飾、6価クロムから3価クロムへ移行中)
トタン/ブリキ(Znめっき鋼板/Snめっき鋼板)
深掘り (原理・応用)
過マンガン酸滴定: KMnO4(赤紫)はMn2+(無色)になるので指示薬不要(自己指示薬)。Fe2+、シュウ酸、H2O2の定量に用いられます。 2KMnO4 + 5H2C2O4 + 3H2SO4 → K2SO4 + 2MnSO4 + 10CO2 + 8H2O。
二クロム酸滴定はFe2+定量に。指示薬(ジフェニルアミンスルホン酸)を加えます。
毒性面: 六価クロムCr(VI)は発がん性、皮膚潰瘍を起こすため工業排水基準厳しい。映画「エリン・ブロコビッチ」の主題。水銀はメチル水銀がタンパク質に強く結合し中枢神経に蓄積、水俣病の原因。カドミウム(Zn族)もイタイイタイ病で骨蓄積毒性が知られます。
- Znは両性金属、HClにもNaOHにも溶ける
- Hgは常温液体、アマルガムを作る
- K2CrO4黄/K2Cr2O7橙、pHで平衡
- KMnO4は赤紫、酸性で無色Mn2+へ
- 過マンガン酸滴定は自己指示薬
- Cr(VI)は発がん性、Hg/Cdは公害病原因
- トタン=Znめっき(犠牲防食)、ブリキ=Snめっき
注意点 (混同しやすい・頻出ミス)
① トタン(Znめっき)は鉄より卑な金属でめっき→キズで露出してもZnが先に溶けて鉄を守る犠牲防食。ブリキ(Snめっき)はSnが鉄より貴→キズで露出すると逆に鉄の腐食が進む。② Zn(OH)2はNaOHにもNH3水にも溶ける(両性かつ錯体形成)。③ MnO4-の還元生成物はpHで異なる: 酸性Mn2+(無色)、中性〜弱塩基MnO2(褐)、強塩基MnO42-(緑)。
練習
- Znを希HClおよび希NaOHに溶かす反応式をそれぞれ書け。
- 過マンガン酸カリウムによるシュウ酸滴定の反応式を書け。
- トタンとブリキで防食原理がどう違うか説明せよ。