鉄・銅・銀の化学
遷移金属のうち最も重要な3元素、Fe・Cu・Agの単体・化合物・反応を整理します。製錬法とイオンの定性検出が頻出。
基本知識
鉄 Fe: 地殻4位、生産量1位の金属。製錬は溶鉱炉で Fe2O3 + 3CO → 2Fe + 3CO2(コークスCで還元)。銑鉄→転炉で炭素を抜いて鋼。Fe2+(淡緑)とFe3+(黄褐)の検出:
・Fe2+ + [Fe(CN)6]3-(赤血塩) → 濃青色沈殿
・Fe3+ + [Fe(CN)6]4-(黄血塩) → 濃青色沈殿(両者は構造的にほぼ同じ「ターンブル青/プルシアン青」)
・Fe3+ + SCN- → 血赤色
銅 Cu: 古代から知られる金属、電気・電子産業必須。電解精錬で純度99.99%。希硝酸でNO発生、濃硝酸でNO2発生、熱濃硫酸でSO2発生して溶解。Cu2+(青)+NaOH→Cu(OH)2(青白沈殿)、加熱でCuO(黒)。
銀 Ag: 電気伝導度最高。希硝酸に溶解 3Ag + 4HNO3 → 3AgNO3 + NO + 2H2O。Ag++Cl-→AgCl(白沈)はNH3水で錯体形成し再溶解。
溶鉱炉(高炉)(鉄鉱石+コークス+石灰石→銑鉄)
転炉(銑鉄→鋼、酸素吹き込みで脱炭)
プルシアン青/ターンブル青(Fe2+/Fe3+検出、ともにKFe[Fe(CN)6]系)
電解精錬(粗銅→純銅99.99%、陽極泥に貴金属)
AgNO3(光・有機物で還元され黒変、写真感光剤)
緑青(銅の腐食生成物、塩基性炭酸銅)
深掘り (原理・応用)
鉄の腐食(さび): 中性水中でO2とH2Oが共存すると、 Fe → Fe2+ + 2e-(陽極領域)、 O2 + 2H2O + 4e- → 4OH-(陰極領域)が局部電池として進み、Fe(OH)2→Fe(OH)3→Fe2O3·nH2O(赤さび)が生成。防錆には塗装・メッキ・犠牲陽極(Zn板)・ステンレス化(Cr添加で不動態化)。
銅の電解精錬では陽極泥にAu, Ag, Ptなどの貴金属が沈降し、これらの副産物が日本の都市鉱山の主要源です。
銀は光に弱く、AgClは光でAg+Cl2に分解。これが銀塩写真の原理。AgNO3水溶液は皮膚・タンパクと結合して黒変(硝酸銀火傷)します。歴史的にAgは抗菌剤としても用いられ、現代でも抗菌コーティング(銀イオン)に応用されています。
- Feの製錬は溶鉱炉(高炉)→転炉
- Fe2+淡緑/Fe3+黄褐
- Fe3++SCN-=血赤色
- 赤血塩=K3[Fe(CN)6]、黄血塩=K4[Fe(CN)6]
- Cuは熱濃硫酸・硝酸に溶ける(希硫酸・希塩酸には溶けない)
- 銅電解精錬の陽極泥に貴金属
- AgClは過剰NH3で[Ag(NH3)2]+として再溶解
注意点 (混同しやすい・頻出ミス)
① 赤血塩K3[Fe(CN)6](III価)はFe2+と反応、黄血塩K4[Fe(CN)6](II価)はFe3+と反応(検出する側と相手の酸化数は逆)。② Cu(OH)2はNaOH過剰で溶けない(Cuは両性金属ではない)、NH3水過剰で溶ける([Cu(NH3)4]2+)。③ AgCl/AgBr/AgIのNH3水への溶解性は AgCl>AgBr>>AgI(AgIはほぼ溶けない)。
練習
- 溶鉱炉での鉄の還元反応式を書け。
- Fe2+とFe3+の検出方法を3つずつ挙げよ。
- 銅の電解精錬の陽極・陰極の反応式を書き、陽極泥に何が含まれるか答えよ。