核酸とDNA
遺伝情報を担う核酸はDNA(デオキシリボ核酸)とRNA(リボ核酸)の2種類。20世紀後半の分子生物学革命の中心です。
基本知識
核酸の構成単位ヌクレオチド = 糖 + リン酸 + 塩基:
・糖: DNA=デオキシリボース(C2'-OHなし)、RNA=リボース(C2'-OHあり)
・リン酸: -PO43-。糖と糖をつなぐリン酸ジエステル結合(-O-PO2--O-)
・塩基: プリン塩基=アデニン(A), グアニン(G)。ピリミジン塩基=シトシン(C), チミン(T、DNAのみ), ウラシル(U、RNAのみ)
DNAの二重らせん(1953年ワトソン&クリック): 2本の鎖が逆平行で、塩基がH結合で対を作る:
・A=T (2本のH結合)
・G≡C (3本のH結合、より強い)
シャルガフの法則: A=T, G=C(モル数)。
セントラルドグマ: DNA → (転写) → mRNA → (翻訳) → タンパク質。遺伝暗号: 3塩基(コドン)で1アミノ酸を指定、43=64通り×20アミノ酸=多くの冗長性。
RNAの種類: mRNA(messenger RNA、遺伝情報運搬)、tRNA(transfer、アミノ酸運搬)、rRNA(ribosomal、リボソーム構成)。
ヌクレオチド(糖+リン酸+塩基、DNA/RNAの単位)
塩基対 A=T, G≡C(水素結合の数で示す)
二重らせん(DNA、約10塩基で一周、幅2 nm)
セントラルドグマ(DNA→RNA→タンパク質)
PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)(DNA増幅、検査・科学捜査)
遺伝子組換え/CRISPR(DNA編集技術、医療応用)
深掘り (原理・応用)
PCR(ポリメラーゼ連鎖反応): 1983年マリスが発明。DNAを耐熱性ポリメラーゼ(Taq)とプライマーを使って熱変性→アニーリング→伸長を繰り返し、特定領域を指数関数的に増幅(2n倍)。法医学(DNA鑑定)、感染症診断(COVID-19のPCR検査)、遺伝子診断、進化研究に必須。
遺伝子組換え: 制限酵素でDNAを切断、リガーゼで連結し外来遺伝子を導入。ヒトインスリンを大腸菌で生産する糖尿病治療薬は1982年実用化された記念碑的成果。
CRISPR-Cas9(2012年ダウドナ&シャルパンティエ、2020年ノーベル賞): 特定DNA配列をピンポイントで切断・編集できる革命的技術。遺伝病治療(鎌状赤血球症のCRISPR治療薬が2023年承認)、農作物改良、絶滅種復活研究などに応用。
mRNAワクチン(2021年実用化、コロナワクチン): 病原体タンパク質をコードするmRNAを脂質ナノ粒子に封入して接種、体内でタンパク質生成→免疫獲得。2023年ノーベル医学生理学賞(カリコー&ワイスマン)。
- ヌクレオチド=糖+リン酸+塩基
- DNA=デオキシリボース+ATGC、RNA=リボース+AUGC
- 塩基対A=T(2H結合)、G≡C(3H結合)
- 二重らせん(ワトソン&クリック、1953)
- セントラルドグマ: DNA→mRNA→タンパク質
- PCRでDNA増幅、CRISPRでDNA編集
- mRNAワクチンが新時代の創薬を開拓
注意点 (混同しやすい・頻出ミス)
① DNAとRNAの違い: 糖(デオキシリボース/リボース)、塩基(T/U)、構造(二重らせん/一本鎖が主)、安定性(高/低)。② A=TとG≡Cの水素結合数を正しく覚える(GCリッチDNAは高温で変性しにくい)。③ シャルガフの法則: A%=T%, G%=C%だが、A+T:G+Cの比は生物種で異なる(ヒトはAT 60%, GC 40%程度)。④ テロメア(染色体末端の繰り返し配列)は分裂のたびに短縮、寿命と関連。
練習
- DNAとRNAの構造上の3つの違いを述べよ。
- あるDNA二本鎖でAが20%だったとき、G/C/Tの割合をそれぞれ求めよ(シャルガフの法則)。
- PCR反応の3つのステップを説明し、なぜDNAが指数関数的に増えるか述べよ。