高校基礎 / 大気と海洋の構造 5 / 6

深層循環と海洋の役割

深層循環と海洋の役割

海洋の深部では、表層とは全く異なる深層循環が地球全体を覆っています。この循環は地球の気候を数百〜数千年スケールで調整しています。

基本知識

深層循環(熱塩循環): 表層の海流が風によって駆動されるのに対し、深層循環は水温と塩分による密度差で駆動されます。高密度の海水が沈み込むことで起きる大規模な循環です。
深層水が形成される主な場所:
北大西洋(グリーンランド〜ラブラドル海): 暖流(湾流・北大西洋暖流)が北上し熱を放出して冷え、高密度になって沈み込む。
南極海(ウェッデル海など): 南極の冷気と海氷形成で塩分・密度が上昇し沈み込む。
深層水は深海をゆっくり流れ、数百〜千年かけて太平洋・インド洋で湧昇して表層に戻ります。この巨大なベルトコンベア状の流れを大西洋熱塩循環(AMOC)またはグローバルコンベアベルトといいます。
深層循環は熱・CO₂・酸素・栄養塩を海洋全体に分配する役割を担います。気候変動で極域の淡水(氷河融解)が増えると、密度が下がり深層水が形成されにくくなり循環が弱まる可能性が指摘されています。

📘 重要用語
深層循環(熱塩循環)(水温・塩分の密度差で駆動。数百〜千年のスケール)
深層水(高密度・低温・高酸素。北大西洋・南極海で形成)
グローバルコンベアベルト(深層循環が世界の海洋をつなぐ大循環)
AMOC(大西洋熱塩循環。ヨーロッパの温暖気候を維持)
湧昇(深層水が表層に湧き上がる現象。栄養塩を運び好漁場を作る)

深掘り

深層循環が弱まるとヨーロッパの気候が大きく変化します。現在のヨーロッパの温暖な気候(同緯度の北米東岸より約10℃温暖)は、湾流・北大西洋暖流が北上して大量の熱を放出しているためです。AMOCが弱まれば北米並みの寒冷化が起きる可能性があります。映画「デイ・アフター・トゥモロー」はこれを誇張したSFです。
深層水は大気からCO₂を溶かし込んで海底に閉じ込める役割もあります。海洋は人間活動で排出されたCO₂の約3分の1を吸収していますが、海水温の上昇はCO₂溶解度を下げ、吸収量が減る可能性があります。
深海底の生態系では、熱水噴出孔冷湧水の周辺で光合成に依存しない化学合成生態系が成立しており、チムニー(煙突状の構造物)から高温の熱水が噴き出す独特の環境が宇宙生命探索の参考例としても注目されます。

💡 ポイント
  • 深層循環=水温・塩分の密度差で駆動
  • 深層水形成場所=北大西洋・南極海
  • 深層循環の周期=数百〜千年
  • グローバルコンベアベルト=世界の海をつなぐ
  • 海洋はCO₂の約1/3を吸収
  • AMOCが弱まるとヨーロッパが寒冷化

注意点

① 表層海流=風による駆動、深層循環=密度差(水温・塩分)による駆動。原動力が異なる。② 深層循環は「数百〜千年」の非常に遅い流れ(表層海流は数cm/s以上だが深層水は数mm/s〜cm/s程度)。③ 気候変動との関連で「循環が止まる=破局的冷却」は科学的に過剰表現。「弱まる可能性がある」と表現する。

練習

  1. 深層循環を駆動する力は何か(表層海流と比較しながら)。
  2. 深層水が形成される主な2つの海域を答えなさい。
  3. 深層循環がヨーロッパの気候に与える影響を説明しなさい。
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このレッスンのQ&A

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