ベクターと遺伝子組換え クローニング技術
目的の遺伝子を宿主細胞に導入し発現させる遺伝子組換え技術は、インスリン生産から品種改良まで幅広く利用されます。ベクターと形質転換の仕組みを理解しましょう。
基本知識
ベクター(運び屋): 外来遺伝子を宿主に運び込むための DNA 分子。
主なベクター:
・プラスミド: 細菌がもつ小型の環状 DNA。制限酵素で切断し目的遺伝子を挿入できる。
・ウイルスベクター: レトロウイルス・アデノウイルス・AAV など。動物細胞への遺伝子導入に利用。
・YAC/BAC: 大型 DNA 断片をクローニングする際に使う酵母/細菌人工染色体。
遺伝子組換えの手順:
① 同じ制限酵素で目的遺伝子とベクターを切断 → 相補的付着末端を生成。
② DNAリガーゼで目的遺伝子をベクターに連結(組換えDNA)。
③ ベクターを宿主(大腸菌など)に導入(形質転換)。
④ 宿主を培養し、目的タンパク質を大量生産。
応用例: ヒトインスリン遺伝子を大腸菌に組み込み→大量にインスリンを生産(1982年に医療用として実用化)。
例題: インスリン遺伝子をプラスミドベクターに組み込んで大腸菌に導入する実験を計画した。以下の問いに答えなさい。(1) 同じ制限酵素を使う理由を述べなさい。(2) DNAリガーゼの役割は何か。(3) 形質転換された大腸菌を選択するにはどうすればよいか。
解答: (1) 同じ制限酵素を使うと相補的な付着末端が生じ、目的遺伝子とベクターが水素結合で近接しリガーゼが連結しやすくなるから。(2) DNAリガーゼは切断されたリン酸ジエステル結合を共有結合で再連結し、組換えDNA分子を完成させる。(3) ベクターに薬剤耐性遺伝子(アンピシリン耐性など)を組み込んでおき、薬剤含有培地で培養すると形質転換体のみが生育する。
解答: (1) 同じ制限酵素を使うと相補的な付着末端が生じ、目的遺伝子とベクターが水素結合で近接しリガーゼが連結しやすくなるから。(2) DNAリガーゼは切断されたリン酸ジエステル結合を共有結合で再連結し、組換えDNA分子を完成させる。(3) ベクターに薬剤耐性遺伝子(アンピシリン耐性など)を組み込んでおき、薬剤含有培地で培養すると形質転換体のみが生育する。
ポイント
- ベクター=外来遺伝子を宿主へ運ぶDNA分子
- プラスミド=細菌の小型環状DNA。最もよく使われるベクター
- 同じ制限酵素→相補的付着末端→DNAリガーゼで連結
- 形質転換=外来DNAを取り込み形質が変わること
- 選択マーカー=薬剤耐性遺伝子で形質転換体を選別
- 遺伝子組換えインスリン=1982年実用化・糖尿病治療に革命
練習
- 遺伝子クローニングでプラスミドが利用される理由を2つ挙げなさい。
- 形質転換した大腸菌のコロニーから目的遺伝子挿入体を同定する方法を説明しなさい。
- ウイルスベクターがプラスミドより動物細胞への遺伝子導入に適している理由を述べなさい。