Hox遺伝子と体軸決定
Hox遺伝子は体の前後軸(頭-尾軸)上の各部位の「アイデンティティ」を決定するマスター転写因子です。ショウジョウバエから哺乳類まで驚くほど保存されています。
基本知識
Hox遺伝子(ホメオティック遺伝子): ホメオドメイン(60アミノ酸のDNA結合ドメイン)をもつ転写因子群。体軸に沿った各部位の形態を決定する。
発見の経緯: ショウジョウバエのホメオティック変異体で発見。Antennapedia(触角に脚が生える)・Ultrabithorax(翅が余分につく)など。これらを制御するのがHox遺伝子クラスターだと判明。
エドワード・ルイス、クリスティアーナ・ニュスライン=フォルハルト、エリック・ウィーシャウスが1995年ノーベル生理学・医学賞を受賞。
共線性の法則: Hox遺伝子はゲノム上の並び順と体軸上の発現領域が対応する(空間的共線性)。ゲノムの5端のHox遺伝子は頭側、3端は尾側で発現する。この法則はショウジョウバエ・マウス・ヒトで保存されている。
ショウジョウバエには8個のHox遺伝子(1つのクラスター)、脊椎動物には4クラスター×13遺伝子=最大39個のHox遺伝子がある。ゲノム重複で数が増えた。
例題: Hox遺伝子の「共線性の法則」を説明し、その進化的意義を述べなさい。また、Antennapediaの突然変異でなぜ触角の場所に脚が生えるのかを説明しなさい。
解答: 共線性の法則とはゲノム上のHox遺伝子の5端から3端への配列順が、体軸の頭から尾の発現パターンと一致する法則。進化的意義は、ゲノム上の並び順と体軸パターンが対応することでHox遺伝子クラスターの長距離クロマチン制御が効率よく行えると考えられる。Antennapedia変異ではHox遺伝子が頭部触角領域で異所性に発現し、本来触角を作る細胞に脚の発生プログラムが起動されるため。Hox遺伝子は「何の器官を作るか」を指令するマスタースイッチとして機能する。
解答: 共線性の法則とはゲノム上のHox遺伝子の5端から3端への配列順が、体軸の頭から尾の発現パターンと一致する法則。進化的意義は、ゲノム上の並び順と体軸パターンが対応することでHox遺伝子クラスターの長距離クロマチン制御が効率よく行えると考えられる。Antennapedia変異ではHox遺伝子が頭部触角領域で異所性に発現し、本来触角を作る細胞に脚の発生プログラムが起動されるため。Hox遺伝子は「何の器官を作るか」を指令するマスタースイッチとして機能する。
ポイント
- Hox遺伝子=体軸に沿った各部位の形態決定する転写因子
- 共線性の法則=ゲノム配列順と体軸発現部位が対応
- ショウジョウバエ8遺伝子、脊椎動物は4クラスター計最大39
- Antennapedia=触角領域でHox異所発現→脚が生える
- ルイス・ニュスライン=フォルハルト・ウィーシャウス=1995年ノーベル賞
- ホメオドメイン=DNA結合部位・Hox間で高度に保存
練習
- Hox遺伝子が「マスター転写因子」と呼ばれる理由を説明しなさい。
- 脊椎動物でHox遺伝子のクラスター数がショウジョウバエより多い理由を進化的観点で述べなさい。
- Hox遺伝子の機能喪失変異と機能獲得変異では表現型がどう異なるか例を挙げて説明しなさい。