呼吸: 解糖系・クエン酸回路・電子伝達系
細胞が酸素を利用してグルコースを分解し、ATPを大量に合成する過程が細胞呼吸(好気呼吸)です。3段階のステージに分けて分子レベルで理解しましょう。
基本知識
第1段階: 解糖系(細胞質基質): グルコース(C₆)→ピルビン酸(C₃)×2。ATP 2分子消費・4分子生産=正味2 ATP、NADH 2分子産生。酸素不要。
第2段階: クエン酸回路/TCA回路(ミトコンドリアのマトリックス): ピルビン酸→アセチルCoA(CO₂放出)→オキサロ酢酸と縮合→クエン酸→段階的に酸化。1ターンで ATP 1分子(基質レベルリン酸化)、NADH 3分子、FADH₂ 1分子、CO₂ 2分子。グルコース1分子で2ターン=正味2 ATP、NADH 8分子、FADH₂ 2分子(解糖系分含む)。
第3段階: 電子伝達系/酸化的リン酸化(ミトコンドリア内膜): NADH・FADH₂が電子を内膜の複合体(I〜IV)に渡す→H⁺が膜間腔にポンプされ濃度勾配を形成→H⁺がATP合成酵素(複合体V)を通過→ATPを大量合成(約32〜34 ATP/グルコース)。最終電子受容体はO₂(→H₂Oに還元)。
グルコース1分子の総ATP収量: 解糖系2 + クエン酸回路2 + 電子伝達系約28〜30 = 合計約30〜32 ATP。
例題
ミトコンドリアの内膜がATP合成に重要である理由を、H⁺の濃度勾配とATP合成酵素の関係から説明しなさい。
解答: 電子伝達系の複合体がNADH・FADH₂から電子を受け取り、H⁺を膜間腔へポンプすることで内膜をはさんだH⁺濃度勾配(プロトン駆動力)が形成される。このエネルギーを使ってATP合成酵素(複合体V)がADPとリン酸からATPを合成する。内膜は非常にH⁺不透過性が高く、H⁺はATP合成酵素を通してのみ通過できるため、この仕組みが成立する。
ミトコンドリアの内膜がATP合成に重要である理由を、H⁺の濃度勾配とATP合成酵素の関係から説明しなさい。
解答: 電子伝達系の複合体がNADH・FADH₂から電子を受け取り、H⁺を膜間腔へポンプすることで内膜をはさんだH⁺濃度勾配(プロトン駆動力)が形成される。このエネルギーを使ってATP合成酵素(複合体V)がADPとリン酸からATPを合成する。内膜は非常にH⁺不透過性が高く、H⁺はATP合成酵素を通してのみ通過できるため、この仕組みが成立する。
ポイント
- 解糖系=細胞質基質・O₂不要・正味2 ATP・NADH 2産生
- クエン酸回路=マトリックス・CO₂放出・2 ATP・NADH 8・FADH₂ 2
- 電子伝達系=内膜・O₂必要・約28〜30 ATP
- 最終電子受容体=O₂→H₂O
- プロトン駆動力=H⁺濃度勾配でATP合成酵素を回転
- 総ATP≈30〜32分子/グルコース
- CO₂放出=ピルビン酸→アセチルCoA変換時とクエン酸回路
注意点
① 解糖系はO₂不要だが、電子伝達系はO₂がないと停止しNADHが再酸化できず解糖系も止まる。② CO₂は解糖系では放出されず、ピルビン酸→アセチルCoAの変換とクエン酸回路で放出される。③ ATPの収量は教科書によって30〜38と幅があるが、現在は約30〜32が主流。
練習
- 細胞呼吸の3段階をそれぞれの場所(細胞内局所)とともに答えなさい。
- 好気呼吸においてO₂が最終的に何に変化するか答えなさい。
- 電子伝達系でH⁺の濃度勾配を利用してATPを合成する酵素の名称を答えなさい。