高校発展 / 植物の生長と環境応答 3 / 6

光周性と花芽形成

光周性と花芽形成

多くの植物は日長(光の長さ)を感知して花を咲かせる時期を調節します。この仕組みを光周性といいます。光周性の分子機構は植物の季節適応の核心です。

基本知識

光周性の分類: ①長日植物(LDP): 日長が臨界日長を超えると花芽形成(短夜植物とも言う)。例: アブラナ・コムギ(秋播き)・ホウレンソウ・アイリス。②短日植物(SDP): 日長が臨界日長より短くなると花芽形成(長夜植物とも言う)。例: アサガオ・キク・コスモス・タバコ(ニコチアナ・タバクム)。③中性植物(日中性植物): 日長に関わらず花芽形成。例: トウモロコシ・トマト・キュウリ。
感知しているのは「夜の長さ」: 暗期(夜)の長さが重要で、臨界暗期より長い(短日植物)または短い(長日植物)かで開花が決まる。暗期の途中に光照射(光中断)すると短日植物は開花せず、長日植物は開花する。
光受容体: フィトクロム: 光周性の感光体。赤色光(660 nm)を吸収するPr型と遠赤色光(730 nm)を吸収するPfr型が相互変換。昼間はPfr型が蓄積し、夜間は暗所でPrに変換(緩慢)。暗期終わり付近のPfr/Pr比が花芽形成のシグナルとなる。
花成ホルモン(フロリゲン): 葉で日長を感知→葉で産生される花成促進シグナル。シロイヌナズナではFT(FLOWERING LOCUS T)タンパク質が師管を通じて茎頂分裂組織へ運ばれ花芽形成を誘導する。
春化(バーナリゼーション): 一定期間の低温処理が開花を促進する現象。秋播きコムギが春に開花するための必須条件。

例題
短日植物に対して「夜間の光中断」を行うと花芽形成が抑制される理由を、フィトクロムの状態変化から説明しなさい。
解答: 短日植物の花芽形成には臨界暗期以上の連続した暗期が必要。暗期途中に赤色光を照射すると、PrからPfrへの変換が起こる。Pfrが蓄積すると暗期が連続していないと判断され、花芽形成シグナルが遮断される。そのため暗期が短くなったと植物が「解釈」し、短日植物は花芽を形成しない。
ポイント
  • 長日植物=日長>臨界日長で開花(短夜植物)
  • 短日植物=日長<臨界日長で開花(長夜植物)
  • 感知するのは「夜の長さ(暗期)」
  • 光中断=暗期途中の光照射で短日植物の開花抑制
  • フィトクロム=Pr(赤色光吸収)⇔Pfr(遠赤色光吸収)
  • フロリゲン=FTタンパク質が師管を通じて茎頂へ
  • 春化=低温処理で開花促進(秋播きコムギ)

注意点

① 「長日植物は長い日に咲く」は正しいが、本質的には「短い夜(臨界暗期未満の暗期)に咲く」と理解する方が正確。② フィトクロムは赤色/遠赤色光の相互変換体だが、クリプトクロム(青色光受容体)も概日リズムや光屈性に関与する。③ フロリゲンの実体は長年謎だったが、2007年にFTタンパク質として同定された。

練習

  1. 長日植物と短日植物を各1例ずつ挙げ、それぞれが花芽を形成する日長条件を答えなさい。
  2. フィトクロムのPr型とPfr型はそれぞれどの波長の光を吸収するか。また夜間はどのように変化するか答えなさい。
  3. 春化とはどのような現象か。秋播きコムギを例に説明しなさい。
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このレッスンのQ&A

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