高校発展 / 免疫と感染症の生物学 5 / 6

免疫の医療応用 ワクチン・アレルギー・自己免疫疾患・HIV

免疫の医療応用 ワクチン・アレルギー・自己免疫疾患・HIV

免疫学は現代医療の根幹をなします。ワクチンによる予防接種から、免疫系の過剰・誤作動によって生じるアレルギー自己免疫疾患、さらに免疫系を破壊するHIV/AIDSまで、免疫の医療的意義を広く学びます。

基本知識

ワクチン(予防接種): 弱毒化・不活化した病原体や特定の抗原を体に接種することで、病気にかかることなく免疫記憶を形成させる手法。一次応答で記憶細胞(記憶B細胞・記憶T細胞)が形成され、実際の病原体に感染した際の二次応答が速く・強くなる。近年のmRNAワクチン(新型コロナウイルスのmRNAワクチン)は抗原タンパク質のmRNAを接種する新型。

アレルギー(I型過敏症): 無害な物質(花粉・食物・ダニ等)アレルゲンに対してIgEが産生される。IgEが肥満細胞・好塩基球のFcε受容体に結合して感作完了。再曝露時にアレルゲンがIgEを架橋するとヒスタミン・ロイコトリエンが一斉放出→鼻水・じんましん・気管支けいれん・最重症ではアナフィラキシーショック。

自己免疫疾患: 免疫寛容が破綻し、T細胞・B細胞が自己組織を攻撃する疾患。例: 全身性エリテマトーデス(SLE)=核酸に対する自己抗体。関節リウマチ(RA)=関節滑膜へのT細胞浸潤・炎症。1型糖尿病=膵臓β細胞へのCTL攻撃。多発性硬化症(MS)=ミエリン鞘への攻撃。

HIV/AIDS: ヒト免疫不全ウイルス(HIV)はCD4⁺ヘルパーT細胞に感染し、最終的に破壊する。CD4⁺T細胞数が<200/μLになるとAIDS(後天性免疫不全症候群)と診断される。細胞性・体液性両免疫が機能不全→カリニ肺炎・カポジ肉腫などの日和見感染症を発症。現在は抗レトロウイルス療法(ART)で発症を抑制できる。

例題
ワクチン接種によって二次応答が速く強くなる理由を、記憶細胞の観点から説明しなさい。
解答: ワクチン接種(一次応答)によって抗原特異的な記憶B細胞・記憶T細胞が長期間生存する。これらの記憶細胞は同じ抗原に再び曝露された際(二次応答)、ナイーブB細胞・T細胞より迅速に活性化・増殖して大量の抗体や細胞傷害性T細胞を産生する。結果として、感染初期に病原体を素早く排除できる。
ポイント
  • ワクチン=一次応答で記憶細胞を形成→二次応答が速い
  • IgE+肥満細胞=アレルギーの主要機構
  • アナフィラキシー=重篤なI型アレルギー・生命の危険
  • 自己免疫疾患=免疫寛容破綻→自己組織攻撃
  • SLE=核酸への自己抗体・多臓器障害
  • HIV=CD4⁺T細胞を破壊→AIDS
  • ART=抗レトロウイルス療法でHIV増殖を抑制

注意点

① ワクチンは感染症を「治療」するのではなく「予防」する。② 自己免疫疾患とアレルギーはどちらも免疫の「過剰反応」だが、標的が自己組織(自己免疫)か無害な外来物質(アレルギー)かで異なる。③ HIVはRNAウイルスで逆転写酵素をもち、逆転写してDNAを作り宿主ゲノムに組み込まれる(レトロウイルス)。

練習

  1. アレルギーにおけるIgEと肥満細胞の役割を、感作・再曝露の2段階で説明しなさい。
  2. 自己免疫疾患の例を2つ挙げ、それぞれどの自己組織が攻撃されるかを答えなさい。
  3. HIVがAIDSを引き起こすメカニズムを、CD4⁺T細胞との関係を含めて説明しなさい。
🔒

このレッスンはログインが必要です

レッスン3以降を学習するにはアカウントが必要です。
無料で登録できます。

無料でアカウントを作る ログイン

このレッスンのQ&A

読み込み中...