獲得免疫② 細胞性免疫と免疫記憶
獲得免疫のもう一つの柱が細胞性免疫です。また、一度感染した相手を「覚えておく」免疫記憶は獲得免疫最大の特徴です。
基本知識
細胞性免疫では、キラーT細胞(細胞傷害性T細胞)が主役です。
① 樹状細胞・マクロファージが抗原提示し、ヘルパーT細胞を活性化する。
② ヘルパーT細胞がキラーT細胞を活性化する。
③ キラーT細胞が、ウイルス感染細胞・がん細胞・移植細胞を直接攻撃して破壊する。
④ マクロファージも活性化マクロファージとして強力に食作用を行う。
抗体では対応できない細胞内に潜む病原体(ウイルスや結核菌など)や、異常細胞に対して有効です。
免疫応答が終わると、関与したB細胞・T細胞の一部は記憶細胞(メモリー細胞)として体内に長期間残ります。同じ抗原が再侵入したとき、記憶細胞が一次応答よりも強く・速く反応する現象を二次応答と呼びます。これが免疫記憶です。
細胞性免疫(T細胞が直接細胞を攻撃する免疫)
キラーT細胞(感染細胞を破壊する細胞傷害性リンパ球)
活性化マクロファージ(強い食作用を持つ状態のマクロファージ)
記憶細胞(過去の抗原を記憶している長寿命のB・T細胞)
一次応答(初めての抗原に対する応答。遅く弱い)
二次応答(記憶細胞による2回目以降の応答。速く強い)
拒絶反応(移植された他人の組織を異物として攻撃する反応)
深掘り
細胞性免疫はがん細胞の排除にも関わっています。日本人の本庶佑は、T細胞が過剰に攻撃しないよう抑える分子PD-1を発見し、これを阻害して抗がん作用を取り戻す免疫チェックポイント阻害薬(オプジーボ)の開発につなげて2018年にノーベル賞を受賞しました。
一次応答と二次応答の違いはグラフで描くと一目瞭然です。横軸を時間、縦軸を抗体量とすると、初回の抗原侵入では数日後にゆっくり抗体が増えてピークも低いのに対し、2回目の侵入では数日以内にピーク値が10倍以上まで急上昇します。臓器移植で問題となる拒絶反応はキラーT細胞による細胞性免疫の働きで、移植時は免疫抑制剤で抑える必要があります。
- 細胞性免疫=キラーT細胞・活性化マクロファージが攻撃
- ウイルス感染細胞・がん細胞・移植組織が標的
- 記憶細胞が二次応答を担う
- 二次応答=速く・強い(一次応答の10倍以上)
- 拒絶反応=細胞性免疫による移植組織攻撃
- 免疫抑制剤で拒絶反応を抑える
- 本庶佑のPD-1発見→免疫チェックポイント阻害薬
注意点
① 体液性免疫(抗体)と細胞性免疫(キラーT細胞)の主役を区別。② ヘルパーT細胞は両方の免疫で司令塔。キラーT細胞は細胞性免疫専属。③ 記憶細胞はB細胞・T細胞両方に存在。④ 一次応答の所要日数は1〜2週間、二次応答は数日以内にピークでケタが違う。
練習
- ウイルス感染細胞を直接攻撃するT細胞を何というか。
- 二次応答が一次応答より素早く強く起こる理由を答えなさい。
- 臓器移植で起こる拒絶反応の主な担い手はどのT細胞か。