甲状腺ホルモンとフィードバック調節
甲状腺ホルモン(チロキシン)は代謝・成長・体温調節に不可欠です。視床下部-脳下垂体-甲状腺の階層的フィードバック調節は内分泌の基本モデルです。
基本知識
甲状腺: 頸部前面にある蝶形の腺。甲状腺ホルモン(チロキシン T4・トリヨードチロニン T3)を分泌。ヨウ素を原料とするアミノ酸誘導体。
チロキシンの作用:
・全身の細胞の基礎代謝速度を上昇させる(ミトコンドリアの酸化リン酸化促進・熱産生上昇)。
・成長・神経発達に必要(幼児期の甲状腺機能低下→クレチン症:知的障害・低身長)。
・両生類の変態を誘導(オタマジャクシ→カエル)。
視床下部-脳下垂体-甲状腺軸(HPT軸):
① 視床下部: TRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)を分泌。
② 脳下垂体前葉: TRHを受けてTSH(甲状腺刺激ホルモン)を分泌。
③ 甲状腺: TSHを受けてチロキシンを分泌。
④ 負のフィードバック: チロキシン濃度が高くなると視床下部・下垂体に作用してTRH・TSH分泌を抑制。
甲状腺疾患:
・甲状腺機能亢進症(バセドウ病): チロキシン過剰→頻脈・体重減少・眼球突出・多汗。
・甲状腺機能低下症(橋本病): チロキシン不足→倦怠感・浮腫・低体温・便秘。
・甲状腺腫: ヨウ素欠乏→甲状腺腫大(甲状腺が肥大して代償)。
例題: 視床下部-脳下垂体-甲状腺軸(HPT軸)における負のフィードバック調節を説明しなさい。またヨウ素欠乏地域で甲状腺腫が多発する理由をこの調節機構から論じなさい。
解答: HPT軸の負のフィードバック: 血中チロキシン(T3/T4)濃度が上昇すると視床下部のTRH分泌と脳下垂体前葉のTSH分泌が抑制され、甲状腺のチロキシン合成・分泌が減少する。逆にチロキシン濃度が低下するとTRH・TSHが増加し、チロキシン分泌が促進される。ヨウ素欠乏地域では甲状腺ホルモンの原料(ヨウ素)が不足するためチロキシン濃度が低下し、負のフィードバックが解除されてTSHが慢性的に高値になる。TSHが甲状腺細胞の増殖・肥大を刺激し続けるため甲状腺腫が形成される。
解答: HPT軸の負のフィードバック: 血中チロキシン(T3/T4)濃度が上昇すると視床下部のTRH分泌と脳下垂体前葉のTSH分泌が抑制され、甲状腺のチロキシン合成・分泌が減少する。逆にチロキシン濃度が低下するとTRH・TSHが増加し、チロキシン分泌が促進される。ヨウ素欠乏地域では甲状腺ホルモンの原料(ヨウ素)が不足するためチロキシン濃度が低下し、負のフィードバックが解除されてTSHが慢性的に高値になる。TSHが甲状腺細胞の増殖・肥大を刺激し続けるため甲状腺腫が形成される。
ポイント
- チロキシン=甲状腺から分泌・基礎代謝促進・成長促進
- HPT軸=視床下部(TRH)→下垂体(TSH)→甲状腺(T3/T4)
- 負のフィードバック=チロキシン上昇→TRH・TSH低下
- バセドウ病=甲状腺機能亢進(頻脈・体重減少・眼球突出)
- 橋本病=甲状腺機能低下(倦怠感・浮腫・低体温)
- カエル変態=チロキシンが誘導
練習
- HPT軸の3段階(視床下部→下垂体→甲状腺)のホルモン名を順に答えなさい。
- バセドウ病で体重が減少する理由をチロキシンの作用から説明しなさい。
- チロキシンが幼児期の神経発達に必要な理由を説明し、クレチン症について述べなさい。